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 愛知県あま市のスポーツ施設工事を巡りプロ野球チケットを授受したとして、2月に県警が収賄容疑で逮捕した元あま市教育委員会スポーツ課長(60)と贈賄容疑で逮捕した同県尾張旭市の建設会社の元幹部(71)について、名古屋地検は26日、いずれも容疑不十分で不起訴とした。賄賂性の立証が困難と判断したとみられる。

 捜査機関が贈収賄容疑で逮捕に踏み切った事例で、収賄側と贈賄側がともに不起訴となるのは異例。地検は3月19日、2人を処分保留で釈放していた。

 県警は2月27日、元課長が2017年6〜7月、市発注のスポーツ施設工事で元幹部の建設会社が受注できるよう便宜を図り、見返りに同10月ごろ元幹部からプロ野球のシーズンペアチケット(約37万円相当)を受け取ったとして2人を逮捕した。

 捜査関係者によると、元課長は16〜17年度に在任し、この間に同社はあま市から16年度5件(計約136万円)、17年度17件(計約950万円)の工事を受注。県警はうち17年6〜7月に受注した工事2件(計約650万円)を巡って賄賂の受け渡しがあったとしていた。2人は逮捕時に容疑を認めていたが、その後の調べに元幹部は「一時的に代金を立て替えていただけ」と賄賂性を否定。地検は、チケットの受け渡しがどの工事の受注に対する見返りか特定できないなど、賄賂性の立証が困難と判断したとみられる。

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 不起訴を受け、元幹部の男性は取材に「不起訴は当然の結論。便宜を図ってもらったことはない」と話した。

 あま市の村上浩司市長は「信頼を回復するため引き続き綱紀粛正し、契約制度の改善に向けて全庁挙げて取り組む」とのコメントを出した。元課長は3月31日付で定年退職。再任用の予定もあったが本人が辞退したため、懲戒処分の対象にはならないという。

 県警捜査2課の加藤武嗣次長は「検察庁の処分についてコメントする立場にないが、起訴に足りる証拠の収集ができなかったことについては真摯(しんし)に受け止め、今後の捜査にいかす」とのコメントを出した。【野村阿悠子、駒木智一】

 ◇贈収賄事件、不起訴判断は異例

 警察が贈収賄事件を手掛ける場合、捜査対象者に社会的地位があるため、検察と入念な打ち合わせをしながら金品授受の存在や背景を内偵する。逮捕に踏み切る時は、起訴される見通しが立っているのが一般的とされ、今回の不起訴判断は異例だ。

 捜査関係者によると、愛知県あま市教委の元スポーツ課長は市のスポーツ施設の修繕対象選定や費用分配を取り仕切っていた。県警に「定年になるまでなじみの業者を助けてやろうと思った」と供述し、権限を使って元建設会社幹部に便宜を図ったとされる。

 県警は、元幹部が元課長に打診した上で、プロ野球チケットの代金を支払ったことを確認した。しかし、元幹部は逮捕後に「支払いは立て替えで、賄賂のつもりはなかった」と話したという。こうした状況などから、名古屋地検は賄賂性の立証が困難と判断したとみられる。

 元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は「元幹部の供述は十分に想定される弁解で、事前捜査がどこまで緻密になされていたか疑問が残る。検察と警察の連携が不十分だった可能性がある」と指摘。一方、同じく元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「起訴するには公判維持のため、逮捕時より高い証拠水準が必要。逮捕しても起訴しない判断はあり得る。2人の逮捕も必要な証拠があれば問題ない」との見解を示した。【駒木智一、野村阿悠子】

4/26(金) 22:52配信
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