野口悠紀雄
「現在でも企業の規模や業種で賃金に大きな格差があります。
大企業の製造業と零細企業の飲食業では4倍くらいの賃金差がある。
背景にあるのは、6年間続いている『アベノミクス』。
株価や企業業績が上がったと胸を張っていますが、それは円安や原油価格の低下に加えて、賃金の伸びを抑えたためです。
これらの要因によって製造業の大企業が利益を得て株価が上がっただけ。
それ以外の分野では賃金は伸びず、そのために消費が増えていません。
消費が増えないと小売業やサービス業の零細企業で売り上げが振るわず、人員を削減せざるをえない。
ここで職にあぶれた人がどこに吸収されるのかというと、大企業の非正規雇用です。
大企業は安く使える多数の非正規雇用労働者のおかげで、人件費を圧縮し、利益を増やすことができます。
つまり、悪循環が起こっているのです。
そうなると、今後も格差がどんどん広がっていく。
アベノミクス以降の統計データを見ると、金融資産がまったくない世帯が増えている一方で、3000万円以上の世帯も増えており、すでに二極化が見られます」