JR横須賀線逗子駅(神奈川県逗子市)の東約300メートルにある踏切で3月、横浜市港北区の男性(当時92)が上り列車にはねられて死亡した。

 住宅街の踏切には、遮断機も警報機もなかった。こうした危険な踏切は、少しずつ減っているものの、昨年3月末の時点で全国に3千近くある。

 神奈川県警などによると、踏切は横須賀線の上下線と車庫線など計9線をまたぎ、長さが約35メートルある。男性は3月21日夕、踏切を3分の2渡った辺りではねられたとみられる。付近には携帯ラジオとイヤホンが落ちていた。県警は男性がラジオを聞いていた可能性があるとみている。

 JR東日本横浜支社によると、この踏切の設置時期は不明だが、1949年の旧国鉄発足より前にさかのぼる可能性があるという。

 JR東は踏切廃止を逗子市と協議してきた。この踏切から約300メートル離れたところには歩道橋があり、踏切入り口には「逗子駅手前の歩道橋をご利用下さい」などの看板がある。だが踏切は、北側の住宅地と、南側の市役所や京浜急行新逗子駅などを結ぶ近道だ。

 踏切のすぐ近くに住む女性(57)は「京急の駅に行くのに、この踏切を渡ると5分、歩道橋を回ると10分。断然近い」と話す。

 また歩道橋には階段しかないため、押し車が必要な高齢の母は渡れない。「常日頃から気をつけてねと言い聞かせています」

 警報機が設置されないのには、警報音を嫌う住民の意向もある。別の女性(83)によると、かつて警報機を付けようという話も出たが、「一日中鳴り続けたら生活できない」と反対意見が出た。遮断機についても開かずの踏切になるのではとの懸念があり、そのまま現在に至っているという。JR東は逗子市や周辺住民の要請に応え、看板や照明の設置などの対策を実施している。

 鉄道の安全施策に詳しい関西大学の安部誠治教授(交通政策論)は「こうした踏切が住宅街にあることに驚く。35メートルもあるのはかなり珍しいのではないか」と語る。

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