羽田新空路下に上皇仮御所 都心通過、騒音懸念
2019年5月13日 朝刊

政府が二〇二〇年までに運用を始める予定の羽田空港新飛行ルートのほぼ直下に、
上皇ご夫妻が仮住まいされる高輪皇族邸(東京都港区)があることが分かった。
旅客機が日中、上空約五百四十メートルを一時間に約三十機通過する。
皇族邸や周辺の住宅地では「日常的な会話が妨げられる程度の騒音にさらされる」と専門家は指摘する。
 
羽田新ルートは二〇年七月に始まる東京五輪・パラリンピック前の運用開始を政府が目指す。
南風が吹く午後三〜七時に、羽田空港へ着陸する国際便が都心上空を通過する。
 
新天皇の即位に伴い、上皇ご夫妻は今夏以降にルート下にあたる高輪皇族邸に転居し、
仮住まいされる(仮住まい後は仙洞仮御所に改称)。
東京・元赤坂の赤坂御所などの改修が完了するまでの間、最長で約一年半を過ごすことになる。
 
国土交通省の説明によると、新ルートで旅客機はおよそ二分間に一度、
皇族邸敷地の西約百メートルの上空約五百四十メートルを通過。
国際線に用いられる大型機の場合は最大七五デシベル、中型機では最大七〇デシベルの騒音がある。
 
飛行機の騒音に詳しい北海道大の松井利仁教授(環境衛生学)は、この値について
「通常の会話の約二〜五倍の音量に相当する。窓を開ければ屋内でも意思疎通に支障が出る。
静かにくつろげる環境とはほど遠い」と指摘する。
 
上空五百四十メートルを飛ぶ航空機の騒音の大きさが半分になるには、
飛行ルート直下から一・五キロメートルほど離れる必要があり、
「皇族邸周辺の住宅や公共施設でも、体感として同程度の負担を感じる」と分析する。
 
新ルートでは並行する二本の滑走路に進入する航空機の衝突を防ぐため、
機体に電波を発射し直線経路での降下を指示する計器着陸装置(ILS)を用いる。
このため、国交省首都圏空港課は「地上にどんな施設があろうが、ルートの変更はできない」としている。
 
宮内庁幹部は「皇族邸が羽田新ルートの下にあることは承知している。
上皇ご夫妻にはお伝えし、ご理解をいただいた」と話している。 (皆川剛、小松田健一)

東京新聞
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