政府は15日、「未来投資会議」(議長・安倍晋三首相)を開き、働きたい高齢者に対し70歳までの雇用確保を企業に求める具体的な方針を示した。継続雇用や他企業へのあっせんなど七つのメニューを設けるよう努力義務を課す。働く意欲のある高齢者を増やし、社会保障費の伸びを抑えることが狙いだ。厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会の審議を経て、雇用期間を70歳までに引き上げることを柱にした高年齢者雇用安定法改正案を来年の通常国会に提出する。

 首相官邸であった会議には、安倍首相や関係閣僚、経団連の中西宏明会長、連合の神津里季生(りきお)会長らが出席した。

 現行法では、定年の60歳を過ぎても働きたい人に対しては(1)定年制の廃止(2)定年の引き上げ(3)定年後に継続雇用――のいずれかによって、65歳まで継続雇用できる仕組み作りを企業に義務付けている。今回は65歳までの現行制度の義務を維持しつつ、雇用確保期間を70歳までに引き上げるよう、強制力のない努力義務を設ける。違反した場合、65歳までは企業名が公表されるのに対し、新たに引き上げる70歳までについては当面、非公表とする。

 具体的には、従来の(1)〜(3)のメニューに加え、他企業への再就職あっせん▽フリーランスとして活動できる資金の提供▽起業支援▽NPO法人など社会貢献活動への資金提供――の四つを企業が高齢者に行うよう新たに盛り込む。企業と高齢者が相談し、七つのメニューのうち、いずれかを選べる仕組み作りを目指す。会議では、企業の取り組み状況を見極めたうえで、将来的には70歳までの雇用義務化に向けた法改正を検討する方針も明らかにした。

 一方、原則65歳としている公的年金の支給開始年齢については引き上げないが、希望に応じて70歳を超えても割り増しした年金を受け取ることができるよう、受給開始時期の選択範囲を広げる。

70歳までの雇用確保に向けた企業の努力義務
1.定年制の廃止

2.70歳までの定年延長

3.継続雇用制度の導入

4.他企業(子会社、関連会社以外)への再就職のあっせん

5.フリーランス契約への資金提供

6.起業支援

7.社会貢献活動への資金提供



毎日新聞 2019年5月15日 19時19分
https://mainichi.jp/articles/20190515/k00/00m/010/189000c