『米中もし戦わば』 ピーター・ナヴァロ

ビル・クリントンの、経済的関与によって中国を変えるというビジョンは壮大かつ理想主義的だった。
任期満了間際の2000年、クリントンはアメリカ経済界の強い後押しを受け、中国を欧米流の平和的民主国家に変えるためのツールとして中国との経済的な関わりを積極的に進めた。
クリントンは、中国との経済的関わりを促進するため中国のWTO加盟を支持するよう議会に要求し、
「中国を受け入れることで、われわれはより大きな影響力を中国に及ぼせるようになる」と厳かに述べた。

壊滅的な経済的帰結を招いたという点で、これほど誤った判断を下したアメリカ大統領は他にいない。
中国がWTOに加盟すると、産業界のクリントン支持者たちは一斉に生産拠点を中国へ移し始め、その結果アメリカでは7万もの工場が閉鎖に追い込まれた。
失業者・非正規雇用労働者の数は最終的に2500万人以上になり、アメリカの貿易赤字は年間3000億ドル以上にまで膨れ上がった。
現在、アメリカの対中貿易赤字は何兆ドルにも達している。

もちろん、こうした経済的大打撃があったにせよ、中国を攻撃的な独裁国家から平和的でリベラルな民主国家に変えるという目標が達成できたのであれば、
中国との関わりも無駄ではなかったと言えたかもしれない。
だが、エコノミストのイアン・フレッチャーが言うように、
「中国の経済成長は中国の民主化にはつながらなかった。それは、独裁国家の経済力向上にしかつながらなかった」のである。