バスの車内や山小屋などで夜を明かし、救助活動を受け下山する登山者ら=19日、鹿児島県屋久島町(登山者提供)
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 登山客ら314人の孤立を招いた世界自然遺産・屋久島(鹿児島県屋久島町)の豪雨では、登山の実施・中止で、専門家である山岳ガイドの判断が分かれた。多くの登山客を危険にさらす事態になり、地元では悪天候時の入山基準を見直す動きが出ている。

 「地元では雨と呼べないほど弱かった」。ガイドの満園茂さん(65)は、18日早朝の状況をこう証言する。午後の時間雨量を50ミリとした予報は把握していたが、入山中止基準の「大雨警報」が出ていなかったことから、島根県から来た60代の3人を連れて山に向かった。麓への道が土砂崩れでふさがれ、孤立したことを知ったのは、下山途中の午後だった。

 一方、屋久島観光協会ガイド部会長の中馬慎一郎さん(46)は、18日午前6時45分ごろ、観光名所「縄文杉」に向かうルートで水があふれ出しやすい地点を確認し、水量が異常に多かったため登山中止を決めている。

 1時間120ミリの記録的豪雨が島を襲ったのは18日昼〜夕とみられる。島東部から縄文杉に向かう県道を中心に土砂崩れや陥没が起き、登山者らはバスの車内や山小屋などで夜を明かした。

 中馬さんによると、豪雨で孤立したガイドは28人。ガイド部会は今後、屋久島のガイド約160人に今回どのように判断、行動したかアンケートを取り、教訓とする考えだ。結果次第では入山基準の見直しも検討する。荒木耕治・屋久島町長も気象庁の予報とガイドの経験を織り交ぜた基準をつくる意向を示した。

 日本山岳ガイド協会の磯野剛太理事長(65)は「屋久島は年間を通して雨が多いが、これほどの豪雨は例がない」と指摘する。その上で、同様の事態を防ぐため、今回土砂崩れが起きた地点をハザードマップにまとめ、降雨時のルート選択や入山の可否判断に生かすことを提案している。

産経ニュース 2019.5.27 07:05
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