◆ ゲーム障害、実態把握急ぐ 診断基準確定で厚労省

生活に支障が出るほどオンラインゲームなどに没頭する「ゲーム障害」を新たな依存症とする国際疾病分類(ICD)が25日、世界保健機関(WHO)の年次総会で採択された。
診断の基準がはっきりし、症例の研究が進みやすくなる。
厚生労働省は今後、国内の実態調査を進め、対策を検討する。

各国で医師の診断や調査に使われるICDの改定は約30年ぶり。
WHO加盟国は今後、国内の統計などを新たな分類に基づくものに切り替える。

新たなICDは「ゲームの時間や頻度をコントロールできない」「日常生活の中で他の活動を差し置いてゲームを最優先する」「生活に支障が出ているのにゲームを続ける」という3つの基準を提示。
当てはまる状態が12カ月以上続いた場合、依存症の疑いがある。

厚労省の推計によると、病的なインターネット依存の疑いがある中高生は2017年度に全国で93万人いるとされ、5年前の前回調査からほぼ倍増した。
利用しているのはオンラインゲームや動画サイトなどが多い。
ただ、ゲーム障害にはネットに接続していないテレビゲームへの依存も含まれ、実態は十分に分かっていない。

ICDの採択を前に根本匠厚労相は24日、「研究を進めた上で、どういう対応が必要か考えていきたい」と表明した。
厚労省は18年6月、WHOがICD改定を発表したことを受けて、10〜20代の9千人にゲームの利用時間などを尋ねるアンケート調査を開始。
実態の把握を急いでいる。

今後大きな課題となるのが対応できる医療機関の少なさだ。
カウンセリングや運動を織り交ぜながら徐々にゲームをする時間を減らしていく治療が有効とされているが、対応できるのは16年時点で二十数カ所という。

厚労省は各都道府県や政令市で、アルコールと薬物、ギャンブルの依存症について治療と情報発信、人材育成を担う拠点病院の選定を進めている。
今後、ゲーム障害についても同様の対応が必要かどうか検討する。

もっとも、生活に困っているわけでもないのに万引きを繰り返す「病的窃盗」は以前からICDに盛り込まれていたが、いまだ拠点病院の対象にはなっていない。
ゲーム障害の対策にも時間を要する可能性がある。

日本経済新聞 2019/5/25 21:17
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45283060V20C19A5CZ8000/