◆ 池袋の事故で元通産官僚が逮捕されないのはなぜか?……高齢者運転、7つの疑問に答えます

「週刊文春」2019年5月23日号の「高齢者運転」特集を受けて、読者から質問が次々と寄せられた。
その数、過去最多の570通超。そこで医師や学者など専門家に再び徹底取材。
人身事故の賠償額や踏み間違いが多い理由、最新の事故防止グッズまで全ての疑問に答える大反響第2弾!

「申し訳ありません」

5月18日、両手で杖を突きながら、サングラスにマスク姿で目白署から現れた元工業技術院長の飯塚幸三容疑者(87)。
飯塚が運転するプリウスが池袋の路上で暴走し、母子2人が犠牲になってから約1カ月が経った。

この事故を機に、多くの人が強い関心を抱く高齢者運転。
まずは最も多く寄せられたこの疑問から答えていきたい。

■ “否認”しているのに逮捕されないのはなぜか

(1)大津の事故では女性ドライバーが逮捕されたのに、池袋の事故では元通産官僚は逮捕されない。警察の忖度があるのか?(41・男)

 社会部デスクの解説。

「逮捕はあくまで捜査の一手段で“懲罰”ではありません。証拠隠滅や逃亡の恐れがないと判断した場合は逮捕しないのが原則。今回は本人が事故を起こしたことを認め、車やドライブレコーダーなどの証拠は押収済みです。また、大津の事故もそうでしたが、基本は現行犯逮捕。ところが飯塚の場合は胸骨を折るなどして、入院しました。仮に逮捕するなら退院直後でしたが、留置に耐えられる状態ではないと配慮した形です」

 だが、飯塚は今でも“否認”を続けている。車体検査ではアクセルやブレーキに異常は確認されなかったにもかかわらず、「ブレーキを踏んだが、利かなかった」と供述しているのだ。

「現場にはブレーキ痕がありませんでしたが、アクセルと踏み間違った可能性が極めて高い。“否認”とはいえ、警察としては、飯塚は出頭するなど捜査には協力的という判断です。ただ、ドラレコの解析などに時間を要しており、在宅起訴までは数カ月ほどかかると見られます」(同前)

 その一方で、元通産官僚という経歴に一定の忖度が働いたと見られる。

 フラクタル法律事務所・田村勇人弁護士の話。

「逮捕令状を出す裁判所では、一般的に社会的地位が高い人間は、逃亡の恐れナシという判断を下します」

 事実、福田康夫元首相の甥の妻、元フジテレビの千野志麻アナが運転する車が死亡事故を起こした時などは逮捕されなかった。

 警視庁に逮捕しない理由を尋ねたところ、

「一般論として逮捕の必要性などは刑事訴訟法の手続に則って判断しています」

■ 年齢より“とっさの判断ができるか否か”が重要

(2)運転に年齢制限は設けられないの?(49・女)

 現在、警察庁では免許制度についての有識者会議を行っているものの、

「有識者などの中にも『地方では運転が必要』『年齢で区切るのは差別』という意見は根強い。自動車メーカーも基本的には年齢制限に反対。有識者会議は4月、地域や時間帯などを限定する免許制度の議論も先送りしており、改革は停滞気味です」(警察関係者)

 道路交通法上、免許停止となるケースは脳梗塞やてんかんなどの症状がある場合。17年からは75歳以上は3年に一度の免許更新時に認知機能検査を受け、医師から認知症と診断された場合は、免許停止や取り消しとなる。

「3年に一度の検査ですが、3年間で認知機能は大きく低下する場合も少なくありません。そもそも検査は筆記試験のみで高学歴の人は通過しやすい。最も大事な運転に必要なとっさの判断は確かめられません」(脳と運転の研究を行う高知工科大学・朴啓彰客員教授)

 実際に昨年、検査で免許停止に至ったのは全受験者の0.1%にとどまる。

(3)親が人身事故を起こしたら賠償額は?(52・女)

 前出の田村弁護士に2つのモデルケースで賠償額を試算してもらった。

(1)信号のある交差点で青に切り替わり右折しようとしたところ、自転車に気づくのが遅れて接触した。男性(39・年収800万円)は全治1カ月の怪我。

「自転車側にも過失があるので、自転車の代金5万円や休業した分の給与、通院・入院慰謝料の85パーセントとすると、賠償金額は約40万円になります」

※続きは下記のソースでご覧ください

2019/6/3(月) 17:00 文春オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190603-00012195-bunshun-soci