2019.6.7 14:42
【シンガポール=森浩】東南アジアで先進国から運ばれたプラスチックごみを強制的に送り返す動きが相次いでいる。これまで最大の受け入れ国だった中国が規制強化にかじを切った結果、日本を含む世界から廃棄物が東南アジアに押し寄せたからだ。国際的な規制が設けられることも決まるなど、ゴミの行方に世界の注目が集まっている。

 マレーシア政府は5月28日、日本や米国、カナダ、オーストラリアなどからプラスチックごみが不法に輸入されたとして、コンテナ60個分に当たる計3千トンを送り返すと発表した。

大半の輸入業者が許可を取得していなかったほか、ごみは汚れすぎておりリサイクルに適さない状況だという。送り返す費用は輸入業者に負担させる方針。ヨー・ビーイン環境相は「これらのコンテナは、虚偽の申告のもとに違法に国内に持ち込まれた。マレーシアは世界のごみ捨て場にはならない」と強調し、輸入業者への取り締まりを強化する方針を示した。

 フィリピン政府は5月31日、カナダから輸入されたゴミのコンテナ69個を送り返した。英BBC放送によると、「リサイクル可能だ」と偽られて輸入されたという。ドゥテルテ大統領は「引き取らないならカナダと戦争だ」と宣言し、受け入れを拒否した場合は「(カナダの)領海内に残すよう」命じた。駐カナダ大使を帰国させるなどごみが引き金となり外交問題に発展した。

中国が2017年末に環境保全などの観点から輸入を原則禁止としたことで、世界のプラスチックごみの流れは一変した。日本の財務省貿易統計によると、16年1月に日本が輸出したプラスチックごみ約7・4万トンのうち、半数が中国、半数がそのほかの国だった。ところが、18年1月以降は中国の割合が急減した。

 新たな輸出先としてクローズアップされたのが東南アジア諸国だ。ロイター通信によると、マレーシアの18年1〜7月のプラスチックごみの輸入量は45・6万トンとなり、半年間だけで17年(約32・6万トン)や16年(約16・8万トン)をはるかに上回る量となった。「先進国は人件費の都合でリサイクルごみを選別する人手を確保できないなどコスト面から、他国に輸出する流れが定着している」と話すのは、東京農工大学の高田秀重教授(環境化学)だ。


 こうした流れの中で、廃棄物の国際的な移動を規制するバーゼル条約が5月に改正され、21年1月からリサイクルに適さない汚れたプラスチックごみが同条約の規制対象となることが決まった。高田教授は「一定の進歩だが、バーゼル条約が強化されても、監視する枠組みができなければ効果は限定的なものになる可能性がある」と話している。

https://www.sankei.com/smp/world/news/190607/wor1906070008-s1.html