<ホルムズ海峡近くでのタンカー攻撃でますます緊張が高まる米・イラン関係。戦争を警戒する声も>

ホルムズ海峡近くのオマーン湾で石油タンカー2隻が攻撃された6月13日、米共和党のアダム・キンジンガー下院議員は、米海軍ならイランを「瞬時に破壊できる」と警告した。攻撃はイランの仕業だというのだ。

イリノイ州第16区選出のキンジンガーは13日、FOXニュースに出演し、ドナルド・トランプ大統領の対イラン強硬政策を支持。米政府は軍事行動を検討すべきかもしれないと示唆した。

「イランに対しては、経済的に圧力をかけ続けるだけでなく、必要とあれば進んで武力を行使すべきだ」とキンジンガーは主張した。「いざとなれば米海軍は、彼らを瞬時に押しやり、突き飛ばして、踏みつけて破壊するだろう」と断言した。

<米国務長官「イランの責任」>

攻撃を受けたのは、日本とノルウェーの企業がそれぞれ所有する2隻の石油タンカーだ。イランの国営イスラム共和国通信(IRNA)は、「イラン海軍は事故の現場に海難救助のための要員と設備を派遣した」と、イラン軍の声明を引用して報道。事故の原因は「調査中」だと伝えた。

だがマイク・ポンペオ米国務長官は、イランを名指しで非難。「アメリカは、この攻撃についてイラン・イスラム共和国に責任があると判断した」とポンペオは述べた。ただし裏付けとなる証拠は示さず、イラン当局は否定している。

「イランが攻撃を仕掛けてくるのは、我々の『最大限の圧力』作戦を解除させたいからだ」とポンペオは続けた。「だがいかなる経済制裁も、罪のない市民を攻撃し、世界の石油市場を混乱させ、核の脅しをかけるイランに厳し過ぎることはない」

5月には、今回と同じ海域でサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ノルウェーが所有する石油タンカーがそれぞれ攻撃を受ける事件が発生した。アメリカはこの時も、攻撃の背景にはイランやその代理勢力がいると非難。イランと対立関係にあるUAEとサウジアラビアもイランの仕業だと主張したが、イランはこれを否定した。

<アメリカの核合意離脱で悪化>

アメリカとイランの関係は何十年も前から険悪だが、2018年5月にトランプ政権がイラン核合意からの離脱を一方的に表明して以降、緊張はさらに高まっている。米政府は、核合意が成立したときに解除した厳しい経済制裁を再開(EU(欧州連合)、ドイツ、フランス、イギリス、中国、ロシアとアメリカのバラク・オバマ前政権が署名したイラン核合意は、イランが核の能力を削減するのと引き換えに制裁の緩和を約束していた)。

アメリカ以外の核合意参加国は引き続き合意を順守していたが、イランの指導部は5月、これらの国々に対し、アメリカの制裁による損失を埋める措置が取られなければ、義務の履行を停止すると警告した。

一方のトランプ政権は、イランからのいかなる脅威にも対応すべく、米兵1500人の追加派遣など、中東地域の軍事力を増強。軍事的な緊張が高まっている。

イランのジャバド・ザリフ外相は6月10日、こう警告している。「誰が我が国との戦争を始めようと、その戦争の幕引きをするのはその者たちではないだろう」

6/14(金) 15:35
ニューズウィーク日本版
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