【ワシントン=永沢毅、ドバイ=岐部秀光】トランプ米大統領は21日、20日夜にイランへの軍事攻撃に踏み切る寸前で撤回していたことを明らかにした。米国はタカ派の独走をとめる歯止め役が不在で、経済制裁に直面するイランでも対立をあおる保守派が勢いを増す。いずれも強硬派が政策決定の主導権を取ることで対立が激化し、両国の衝突リスクが高まっている。

トランプ米大統領は21日にツイッターに投稿し、前日のイランへの軍事行動計画の詳細に言及した。イラン革命防衛隊に米無人偵察機が撃墜されたことの報復措置として、20日夜にイランの3つの異なる拠点を攻撃する態勢に入った。米メディアは、イランのレーダーシステムやミサイル関連施設が標的になっていたと報じた。

トランプ氏は米軍高官から攻撃による死者が150人に及ぶと聞き、「攻撃10分前に中止を命じた」とツイートした。

攻撃計画を撤回したのは「無人機の撃墜と(死者数が)釣り合わない」のが理由だとしたうえで、「私は(軍事計画を)急いでいない」とした。ただ制裁強化によってイランは「決して核兵器を保有することはできない」とも強調し、今後もイランに強硬姿勢で臨む方針を示した。

さらに米政府は国連安全保障理事会に対して、24日にイラン情勢を巡る非公開の会合を開くように要請した。無人機撃墜を受けて、多国間でイランの包囲網を築く狙いがある。

具体的な攻撃計画が策定されるほど危機が高まる米イラン情勢。政権内でトランプ氏に軍事行動を唱えているのは、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)やポンペオ国務長官といった対イラン強硬派だ。

5月以降、サウジアラビアのタンカー攻撃など米国がイランの関与を疑う事件が相次いだ。20日は米国の無人機が標的となった。イラン外務省のアラグチ次官は同機が領空内に侵入したと主張し、「争う余地のない証拠がある」と語った。米国は領空侵犯はないとしており、両者の見解は真っ向から対立している。

米国とイランを巡る緊張が高まるなかで、ボルトン氏らは軍事行動の選択肢を視野に入れる。米紙ワシントン・ポストは、トランプ氏自身がイラン政策を巡る明確な方針を持たず、政権内で発言力を増すボルトン氏など保守派の意見が通りやすくなっていると伝える。

以下ソース先で

2019/06/21
日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO46405460R20C19A6EA2000