https://amd.c.yimg.jp/amd/20190716-00208526-diamond-000-1-view.jpg

※省略

 財政赤字を積極的に容認する「現代貨幣理論」(MMT)をめぐる論争が熱を帯びる。

 世界経済の不透明感が強まる一方で金融政策に手詰まり感があるなかで、財政政策への期待が高まっていることが背景にある。長年、支配的な経済思想だった市場重視の新自由主義に対する「反緊縮」のアンチテーゼの色彩もある。

 MMTは日本で有効なのか、どういう可能性を持つのか――。アベノミクスの指南役でもある浜田宏一・イェール大学教授(内閣官房参与)に聞いた。

※省略

 ――かつてMMTと同様に財政赤字を正当化する「シムズ理論(財政の物価決定理論)」を評価されましたが。

 決定的に違うのは、MMTの場合は、財政赤字に対して、中央銀行が受動的に、紙幣を刷って全てファイナンスするというヘリコプターマネーに似た考え方を含んでいることです。

 シムズ理論や伝統的な経済学は、財政赤字で国債が増発される場合、中央銀行が独立した立場で、インフレが高進しないように売りオペなどをして金利をコントロールする。

 中央銀行の政策が物価や雇用に影響を及ぼす前提ですが、MMTでは、中央銀行は名目金利を一定にするように資金を供給する、いわば機械仕掛けの「紙幣プリンター」のような位置付けです。

 無限に紙幣を刷ると当然ながらインフレになる。誰もがおカネよりモノを買い求めるからです。しかしMMTでは、インフレがどういうスピードで進むのか、どこでインフレを止めるかという議論はされていません。

 ――「シムズ理論」のように「目からウロコ」とはいきませんか。

 ただし、日本の場合、根強い財政均衡主義の呪縛を解く解毒剤になるのではないでしょうか。

※省略

 ――しかしMMTを実践すれば、インフレになり物価上昇が止まらないということになりませんか。

※省略

 インフレの止め方については、MMTでは曖昧にしているようですが、MMTの前提にあるのは、物価の番人である中央銀行はないのに等しい、あっても政府の奴隷であるような位置付けです。

 MMTがインフレを止められないようなシステミックな不安定性を内蔵している理論だということには、注意しておかないといけません。

※省略

 ――MMTは財政による資金供給を重視しているように思います。貨幣数量説の考え方で、リフレ派が主張していた政策には限界があったのではないですか。

 金融緩和の効果がいろんな意味で薄れてきているのは事実です。デフレ脱却では、金融政策だけでなく財政政策も両方が必要なことは、私も「シムズ理論」にふれるまでは、十分、理解していたわけではありませんでした。

 ただ日本の場合、一番、重要で深刻だったのは、金融政策の限界というよりも金融政策の失敗がデフレをひどくしたことです。

※省略

 ――アベノミクスの今後ですが、物価上昇は「2%インフレ目標」には届かないとはいえ1%台で、需給ギャップも回復しています。MMTの主張は現実性があるのでしょうか。

※省略

 それに海外の経済情勢に不透明感があり、国際的な波風が荒くなるのに備える必要があります。私は一時、インフレ目標も1%でも良いのではと、考えたのですが、リフレ派の人には弱みをみせたらだめだと、すごく怒られました。

 もし日本がMMTの考えを取り入れるようになれば、今度は物価目標がインフレ防止に働き得ることにもなりますが、海外の波風も荒いので、2%目標は変えないで、金融政策が頑張れるようにしておくほうがいいと思っています。

 ただ、金融政策は為替に影響を与えることはできるのですが、大幅な円安になれば、トランプ大統領から人為的な為替操作だと批判を受けるリスクや障害があります。

 そう考えると、財政は物価にすぐに効くかどうかはわかりませんが、需要には効きますので、景気が落ち込んだ時には財政が主役になるのかもしれません。(続きはソース)

7/16(火) 6:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190716-00208526-diamond-bus_all