「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」や「らき☆すた」「けいおん!」……。

 火災のあったアニメ制作会社「京都アニメーション」は業界準大手として、数々の人気シリーズをテレビや劇場に送り出してきた。

 「優秀なスタッフを多く集め、非常に質の高い作品を世に出してきた。放送前から大きな話題になるのがここ数年のお約束だった」

 東京のアニメ制作会社で役員を務める男性は「見上げるような存在」だという「京アニ」の火災に驚きを隠さない。

 京都アニメーションの創業は1981年。業界内では下請け時代から丁寧な仕事ぶりが評判だった。元請けとなった同社がブレークしたのは2000年代半ば。人気ライトノベルの映像化や4コママンガを原作とした作品を手がけた。

 描き込みの多い丁寧な作画が持ち味で、「京アニクオリティー」という言葉が生まれるほど国内外にファンが多い。日本大学芸術学部映画学科の津堅信之講師(アニメーション史)は「京都アニメーションは他のスタジオにはまねのできない、唯一無二の存在だ。色使いが特徴的で、微妙な中間色はファンが見ればすぐ京アニとわかるほどだ。年頃の女の子の指先や目の表情などキャラクターの細やかな動きも他の追随を許さず、女性ファンも多い」と評価する。

 今月5日からは男子高校生が水泳に打ち込む「劇場版Free!―Road to the World―夢」が全国公開中。来年1月には、戦争で両腕を失い、義手で代筆業をする少女が主人公の「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が公開予定だった。

 アニメ制作会社のスタジオには通常、作画や美術など多くのスタッフがいる。以前、仕事を発注したことがあるアニメ制作会社・虫プロダクション(東京)の森井俊行取締役は「スタッフが1人欠けるだけで工程が厳しくなる。スタジオ全体が燃えており、今のままアニメの制作を続けるのは難しいのではないか」と心配する。

 信用調査会社によると、従業員は200人ほど。アニメーターを育てる京都府の専門学校の教員によると、優秀な人材が集まっていて、新卒はなかなか就職できないという。この教員は「日本の宝のようなアーティスト集団。特に画力、絵の質が圧倒的。日本のアニメ業界はどうなるのか」と懸念する。

 あるアニメ制作関係者は首をかしげる。「下請けの不安定な形態が多いアニメ制作会社にあって、自社制作のモデルを作り上げた、まれな存在。悪いうわさを聞いたこともなく、なぜ狙われたのだろうか」

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