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米メディア「憲法改正、より難しく」 参院選結果を分析
2019年7月22日 3:48

【ニューヨーク=大島有美子】米国のメディアは21日、与党が改選過半数の議席を確保した参院選の結果について「有権者は安全な道を選んだ」(政治専門メディアのポリティコ)と伝えた。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2を下回ったことで「憲法改正の実現性はより薄くなった」(米紙ワシントン・ポスト電子版)との見通しも示した。

ポリティコは「大半の有権者は実績で未知数な野党より、安全な道を選んだ」と分析した。安倍晋三首相が経済政策に力を入れてきたことや、北朝鮮のミサイルや核問題、中国の軍事的な存在感の高まりに安定感を持って対応してきたことを紹介した。さらに「安倍首相はトランプ米大統領と良好な関係を築く外交力も披露した」と指摘した。

ポリティコは与党、野党それぞれを支持する日本の市民の声も伝えた。「実行力のない政治家や政党には投票する理由がない」とした与党支持者の声を紹介した。一方で「与党の政権が長すぎて、弊害が生じ始めている」と危機感を募らせる野党支持者の声も伝えた。

米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は安倍首相とトランプ氏、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との関係を挙げ「安倍氏は世界の舞台におけるリーダーの地位を確立するため、懸命に動いてきた」と評価した。さらに「野党が安倍氏が築いた(外交での)象徴的な出来事に対峙するのは難しいだろう」との見方を示した。

トランプ米大統領は5月、日米の貿易交渉について「日本の選挙の後まで待つ」と述べた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版は「日本は交渉を急いでおらず(米中など)他の交渉の行方を用心深く見守っている」と伝えた。

日本の内政についての分析も報じた。10月に予定する消費増税についてブルームバーグ通信は「急速に進む高齢化における社会保障費が膨らむなか、財政健全化を助けるもの」と説明した。過去2回の消費増税後に経済が停滞したと言及した。日本メディアの世論調査を引用し「57%の回答者が増税に反対した」とした上で「それでも増税は与党の勝利への道を阻まなかった」と伝えた。

憲法改正に関しては、ワシントン・ポスト電子版が「安倍首相は、日本が国際論争でより力を持てるような憲法改正の可能性を高めるため、十分な議席数を獲得したかった」と伝えた。ただ「有権者は雇用や経済、社会保障により強い関心があり、憲法改正はもともとハードルが高かった」と指摘した。

投票率が50%を下回り、参院選で過去2番目の低さとなったことについてニューヨーク・タイムズは「有権者は自分が投票しても(政治が)変わらないと思っている」という有識者の声を紹介した。同紙は「多くの有権者にとって野党5党を(与党の対抗軸として)一括してとらえるのは困難だった」とも伝えた。