国内外で人気の漫画「名探偵コナン」の世界を体験できる鳥取県北栄町(ほくえいちょう)の「青山剛昌ふるさと館」について、運営する町が新築移転を含めた今後の在り方の検討に入った。

 平成19年の開館以来、ファンの聖地として人気はうなぎ上りで、昨年度の来館者は過去最多の16万1300人に上ったが、想定を上回る来館者で手狭となった上、原画などの所蔵品の展示・保管場所も不足しているためだ。

 ■「コナンに会える町」

 「漫画のキャラクターが好きで、ここに来るのを楽しみにしていた」。7月20日、台湾から家族4人で同館を訪れたリャオ・チェン・ユーさん(14)はうれしそうに話した。

 主人公の江戸川コナンが難事件を次々に解決する漫画はアニメ化され、世界40の国や地域で放映されている。近年は台湾や韓国、中国を中心に外国人の来館者が急増しており、昨年度は全入館者の約11%が外国人だ。石田敏光館長(67)は「国籍に関係なく、みんなが笑顔になって帰っていく。ここは世界平和の拠点」と胸を張る。

 同館は平成19年3月、旧・大栄歴史文化学習館を改装し、同町出身の作者・青山剛昌氏の資料館としてオープンした2階建ての施設だ。青山氏の幼少時代の資料や、仕事場を再現したコーナーのほか、作品の世界を体験できるアトラクションも設置。生原稿や貴重なグッズなどが展示されており、国内外のファンから聖地として人気だ。

 町は、資料館を拠点に橋や通りにキャラクターの銅像やオブジェを置いて「コナンに会える町」としてPRしてきた。青山氏が生まれた北栄町の玄関口、JR由良駅は「コナン駅」の看板も掲げており、コナン像の前は人気の撮影スポット。駅から同館を結ぶ約1・5キロの「コナン通り」にも登場人物の像が並ぶ。県は人気漫画家の故郷をアピールしようと、24年に「まんが王国」を標榜、鳥取空港の愛称を「鳥取砂丘コナン空港」とし、空港内にはコナンのオブジェも充実している。

 ■GWは入館まで2時間待ち

 一方で、人口約1万5千人という小さな町の学習施設だった建物はもともと、多くの入館者を見込んだ構造ではなかった。エレベーターはなく、展示スペースは約680平方メートル。イベントを開けるような空間はない。所蔵品の保管場所も不足しており、作者から寄贈された貴重な原画は、やむなく役場の出納室で保管している状態だ。

 19年度の入館者は約7万8千人だったが、昨年度は倍以上に増加。10連休だった今年のゴールデンウイーク(GW)の入館者は5月3日に1日あたり4619人と過去最高を記録し、施設前には長蛇の列ができた。入館まで最大2時間を要したという。

 所蔵・展示スペースの飽和状態と、混雑状態を重く見た地元商工会や観光協会など8団体は昨年2月、移転新築を求める請願書を町議会に提出。町は今年6月、有識者らによる「あり方検討委員会」を発足させた。

 ■移転候補地は出会いの広場

 地元団体が移転新築先として提案したのが、現在地から約700メートル南の町有地「出会いの広場」(県運転免許試験場跡地)だ。敷地内には複合施設「コナンの家 米花商店街」がある。町観光交流課は「現在地の約4倍の広さがあり、駅から近くなるメリットがある」と説明する。

 検討委員会では、現在の課題を抽出し、施設の場所や展示内容、必要な施設設備などを幅広く議論する。8月中に来館者や町民へのアンケートも実施し、今年度中に意見をまとめる計画だ。

 会長を務める兵庫県立美術館の蓑豊館長は「人口の少ない町にこれだけの外国人が集まるのはすごいこと。やり方によってはまだまだ伸びる可能性がある」と話している。

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