https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190729/k10012013071000.html

シベリア抑留の戦没者とされた遺骨「すべて日本人ではない」
2019年7月29日 18時40分

戦没者の遺骨を取り違えていた疑いが明らかになりました。終戦直後にシベリアに抑留されて亡くなった日本人のものとして厚生労働省の派遣団が5年前に収集し日本に帰還させた遺骨について、DNA鑑定をした専門家が「判別できた遺骨はすべて日本人ではない」とする鑑定結果を示していたことがNHKの取材で分かりました。

鑑定した専門家は厚生労働省の非公開の会議などで「間違って収集した遺骨はロシア側に返すべきだ」などと指摘していましたが、厚生労働省はこうした鑑定結果を現在まで公表していません。

旧ソビエトのシベリアなどに抑留された日本人のうちおよそ5万5000人が厳しい寒さの中で過酷な労働を強いられて亡くなったとされ、厚生労働省は平成3年度からロシア側から提供された埋葬者の記録などをもとにこれまでにおよそ2万2000人の遺骨を現地で収集し日本に帰還させています。

しかし5年前の平成26年8月、厚生労働省の派遣団が東シベリアのザバイカル地方で日本人のものとして収集し、すでに帰還させている16の遺骨について、厚生労働省からDNA鑑定を委託された専門家が「16の遺骨のうち判別できた14の遺骨はすべて日本人ではない」とする鑑定結果を示していたことがNHKの取材で分かりました。

NHKが入手した議事録などによりますとこうした鑑定結果は去年8月に開かれた厚生労働省の非公開の会議で報告され、その後、鑑定した専門家は「間違って日本人ではない遺骨を持ってきたことが分かっているのだから遺骨はロシア側に返すべきだ」などと指摘していましたが、厚生労働省はこうした鑑定結果を現在まで公表せず遺骨も返還していません。

関係者によりますと問題の遺骨が収集された現場は主にロシア人が埋葬されている共同墓地の一角にあり、派遣団はロシア政府から提供された地図や現地住民の証言などを根拠に埋葬場所を特定していたということで、現場に日本人の遺骨かどうかを判断する日本側の鑑定人は同行していませんでした。

戦没者の遺骨収集事業をめぐっては日本兵のものとしてフィリピンで収集された遺骨の一部についても7年前、2人の専門家が「日本人とみられる遺骨は1つもなかった」とするDNA鑑定の結果をまとめていましたが、厚生労働省は去年8月にNHKがこの問題を報じるまで公表していませんでした。

NHKの取材に対し厚生労働省は「プライバシーの問題がありお答えできない」としています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190729/K10012013071_1907291839_1907291840_01_02.jpg