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【指定廃棄物の行方】求め続けた白紙撤回 塩谷町候補地選定から5年
2019/07/31

 放射性物質を含む指定廃棄物問題で、環境省が塩谷町上寺島の国有林を処分場(長期管理施設)の詳細調査候補地に選定してから、30日で5年が経過した。町は一貫して選定に反対し、2015年12月には候補地の「返上」を同省に伝達した。候補地は過去の大雨で冠水しており、町は「選定要件に合致しない」と改めて主張。選定直後に町民らが結成した反対同盟会は「白紙撤回」を目指し、運動を続けている。


 透き通った清流に面し、高さ20〜30メートルほどの杉林が広がる。町役場から約15キロの高原山の中腹。車1台がやっと通れる悪路を進んだ先に、処分場の詳細調査候補地がある。30日、同町の担当者と現地に入った。

 土の上に堆積した砂、杉の根元に絡みついた無数の枝。「水が流れ、冠水した痕です」。担当者が指さし強調した。今月下旬の大雨で、すぐそばを流れる川が増水し、候補地にまであふれたとみている。

 15年9月の関東・東北豪雨でも、環境省が認める候補地の一部冠水があった。一部の川岸は浸食され、倒れたり根が露出した木々も。担当者は候補地を眺めながら「選定要件に合致しない。安全を確保できる場所ではない」と語気を強めた。

 町に衝撃が走った5年前。候補地選定から数日後、「塩谷町民指定廃棄物最終処分場反対同盟会」が発足。尚仁沢湧水に近い自然を守る−。2千人規模の集会を開き、反対を訴えた。街中に「断固反対」「白紙撤回」と記された看板やのぼり旗が無数に立ち並び、人口約1万2千人の町の景色は一変。町も総務課内に対策班を設置した。

 町は15年12月、同省に対し候補地の「返上」を申し入れた。以降、町を挙げた反対運動は次第に落ち着きを見せ、街中にあふれたのぼり旗も今では少なくなった。だが、同盟会の君島勝美(きみじまかつみ)会長は「処分場を造らせないという町民の意思は変わらない」と強調する。

 候補地選定から5年。町民と併走してきた見形和久(みかたかずひさ)町長は「町を思い、反対運動を続けてくれていることはありがたい。今後も(指定廃棄物関係の)問題を町民と考えていきたい」と話している。

詳細調査候補地内の倒木を確認する町職員=30日午前、塩谷町上寺島
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動画
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