https://jisin.jp/life/health/1762471/
「今回の受賞で、安全・安価ですべての固形がん(塊を作るがん)に有効な『増感放射線療法・コータック』が世間に認知される可能性が広がることに、
率直に喜んでおります」
高知大学名誉教授で高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘さんは、日本ベンチャー学会会長賞受賞決定の報を受けてこう語る。

日本ベンチャー学会会長賞とは、文部科学省所管の国立研究開発法人「科学技術振興機構(JST)」と経済産業省所管の国立研究開発法人
「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」が主催する「大学発ベンチャー表彰2019〜Award for Academic Startups〜」の賞の一つ。
同賞は、今後の活躍が期待される、優れた「大学発ベンチャー」のうち、とくにその成長に寄与した大学や企業などを表彰するもの。
今回は小川さんとベンチャー企業として製薬会社KORTUCの松田和之社長が選ばれた。

『増感放射線療法・コータック』は小川さんが2006年に高知大学で開発した放射線療法。
大きくなって放射線療法が効きにくくなったがんの効き目を3倍にする、画期的な治療法だ。
全国の病院で臨床試験が行われ1千例を軽く超える治療実績がある。
自身で20年来、研究・改良に心血を注いできた「コータック」の意義について、次のように話す。

「(オプジーボを含め)数千万円もする高価ながん治療薬があるなか、コータック治療は1回わずか500円。というのは、コータックは消毒液でもある
オキシドールと、健康食品や美容液にも使われるヒアルロン酸をがんに注入するだけで、ほとんど副作用なく、がん細胞を弱らせることができるからです。
わが国で1年間に約9万人の女性が新たに罹患される乳がんに対しては、ほぼすべての患者さんで乳房切除手術をせずにこのコータックで
治療することができます。ほかにも多くの固形がんを手術なしに治療することが可能です」

しかし、コータックには課題がまだ残されている。

「コータックは現在までの本学の臨床試験で問題はなく、安全性は保たれていますが、保険適用されていません。治療できる病院も多くありませんので、
ほかの高額な薬や治療を選択せざるを得ない人が多いんです。公的保険で高額の医療費を負担する分が膨れ上がると日本の国民皆保険制度も
崩壊するでしょう。私は一刻も早く、より多くのがんに苦しんでいる患者さん、ご家族を救いたい」

今回の受賞事由として、「大学発ベンチャー表彰2019」選考委員会は次のように評価している。

《(コータックは)すでに国内複数の施設で多数の治療効果をあげるとともに、英国のがん研究機関との連携により臨床治験を進め、日本発のがん治療法の
世界への展開にむけ着実に進展している点が高く評価された。がんに対する放射線治療の効果を安全かつ低コストで高める技術であり、対象市場が大きく、
乳がんのみならず、様々ながん種に展開する可能性があることから、今後大きく成長することが期待される》

ここにも書かれているように、コータックのイギリスでの臨床治験が順調に進むと、日本での保険適用も近づいてくる。
6月に、これまでのコータック研究の過程と成果を自ら綴った著書『免疫療法を超えるがん治療革命 増感放射線療法コータックの威力』(光文社)を出版した
小川さんは、今後の展望についてこう語る。

「今回の受賞は、3年後の2022年を想定している国内認可〜保険適用、つまり安価でのコータック実用化に向けた第一歩と言えます。開発者としての
私の喜びはさておき、なによりこの『コータック治療』をまだご存じない方や、全国の『がん治療・放射線治療』に従事する方に、
認識してもらうためのきっかけとなる賞をいただいたと思っております」

※著書についてはソースでどうぞ