【北京=原田逸策】中国商務省は2日夜、米国が1100億ドル分(約11兆円)の中国製品に1日から15%の追加関税をかけた措置に対し、世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。米中は9月初めにワシントンで閣僚級の貿易協議を予定していたが、実現はさらに不透明になった。

商務省報道官は声明で「米国の追加関税は(6月末の)大阪での米中首脳会談での合意に著しく反し、中国は強烈な不満と断固たる反対を表明する」と指摘した。首脳会談でトランプ米大統領は「当面は追加関税をかけない」と約束したが、7月末の上海での協議が不調に終わると、3000億ドル分の中国製品を対象にした制裁関税「第4弾」を課す方針を決めた。このうち9月1日に発動したのは1100億ドル分。

今回の提訴には米国がWTOを軸とする多角的貿易体制を軽視する一方、中国はWTO体制を重視すると国際社会に印象づける狙いがある。中国はすでに大半の米国製品に追加関税をかけており、報復措置が限られていることも背景にありそうだ。中国は2018年9月にもWTOに米国を提訴している。

米中が9月初めに予定した協議は実現が危ぶまれる。商務省の高峰報道官は8月末の記者会見で、新たな追加関税措置を取り消すことが協議再開の条件になるとの考えを示唆していた。

2019/9/2 22:30 (2019/9/2 23:03更新) 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49330950S9A900C1MM8000/