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<原発・福島のいま>「復興」強調?来年完成の原子力災害伝承館 展示内容に専門家も疑義
9/14(土) 13:00配信

 福島県が双葉町に整備する東日本大震災・原子力災害伝承館の展示内容に県内の専門家が疑義を呈している。県の先行施設は東京電力福島第1原発事故の被害に関する紹介が少なく、伝承館も同様の展示内容にとどまるのではないかという懸念がある。原発容認の立場だった事故前の責任も含め、どのように伝えるか県の姿勢が問われる。(福島総局・神田一道)

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 伝承館は、県が約55億円を投じて整備する。「プロローグ」から「復興への挑戦」までの六つのゾーンを配置し、映像や写真、パネルなどで紹介。来年5月末の完成で、東京五輪開幕を見据えた開業を目指す。

 「福島の復興といった肯定的側面が強調される施設になる」と懸念をあらわにするのは、福島大共生システム理工学類の後藤忍准教授(環境計画論)。例として、県が2016年に三春町に整備した施設「コミュタン福島」を挙げる。

 コミュタンは原発事故後の経過や環境回復の現状などを紹介する。パネルの説明文に含まれる約1万2000語を後藤氏が解析すると、「安全」「利用」といった肯定的キーワードが上位20位に入った。

 ウクライナ・チェルノブイリ原発の博物館も調べてみると、日本語音声ガイドの約1万4000語の上位20位に肯定的な単語は皆無だった。逆に「事故」「汚染」「死亡」など否定的なニュアンスが目立ち、後藤氏は「日本の公的施設は回復の成果や美談が強調されやすい。コミュタンもその傾向から逃れられなかった」とみる。

 伝承館はどうか。後藤准教授は、県が今年3月に公開した伝承館の紹介動画を分析した。県民10人が体験を語る約16分の発言内容などを「教訓」「挑戦」の二つに分類し、割かれた時間を調べた結果、「挑戦」が41%、「教訓」が21%だった。

 「復興に歩むという『挑戦』のストーリーを強調したい雰囲気。被災者の苦境をありのまま『教訓』として伝える姿勢に乏しく、展示内容も似た傾向になる恐れがある」と後藤氏は警鐘を鳴らす。
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