0001しじみ ★
2019/09/17(火) 21:57:14.71ID:kTxFto5S9米スタンフォード大学とカリフォルニア大学サンフランシスコ校のチームが共同で研究を実施。風邪を引き起こすウイルスに直接はたらきかけるのではなく、ウイルスが自己複製に必要とする、人体の細胞を構成するたんぱく質を標的とする方法を試みた。
ネズミを使った実験と、人間の肺細胞での実験では「完全な予防」を達成。しかし、臨床実験の段階にはないという。
■風邪ウイルスが住みにくい体に
医学界において、風邪との闘いは大きな問題となってきた。
風邪の症状はライノウイルスによって引き起こされる。ライノウイルスは約160種類が特定されているが、容易に変異するため、薬への耐性を得やすく、免疫システムからも逃れやすい。
学術誌「Nature Microbiology」で発表された今回の研究では、人体を風邪ウイルスの住みにくい環境にする「宿主標的治療」というアイデアを採用した。
風邪ウイルス単体では、自己複製に必要な要素をまかなえない。そのためウイルスは、感染した宿主の細胞から必要な要素を盗み出して利用する。
これが、科学者がいまだに、ウイルスの生死を議論している理由でもある。
チームは今回、ウイルスが自己複製に使っている要素の1つを発見した。
■ウイルスが依存するたんぱく質
研究チームはまず人間の細胞を使い、遺伝子編集技術でDNA内のスイッチをひとつずつオフにしていった。
そして、この修正された細胞をさまざまなエンテロウイルスにさらした。エンテロウイルスには風邪の原因となるライノウイルスのほか、ポリオ(急性灰白髄炎)など、まひにつながる危険なものも含まれる。
その結果、「メチルトランスフェラーゼSETD3」と呼ばれるたんぱく質のスイッチをオフにした場合、すべてのウイルスが自己複製できないことが分かった。
研究チームは次に、このたんぱく質を生成できない遺伝子を持つネズミを作り出し、実験を行った。
スタンフォード大学のヤン・カレット助教授はBBCの取材に、「この遺伝子がないことで、ネズミは全くウイルスに感染しなくなった」と説明した。
「遺伝子を書き換えていないネズミは(突然変異しなければ)常に死亡していたが、このネズミは生き延びた。また、ウイルスの自己複製を大きく減少させ、予防の効果も非常に高いことが分かった」
このたんぱく質は本来、細胞内の「細胞骨格」と呼ばれる部分、細胞の形態を維持する繊細な「足場」のような構造を作っている。
今回の実験でゲノム編集されたネズミは、このたんぱく質を持たなかったが、健康だったという。
■人間への適用は?
次の段階では、ゲノム編集された人間を作り出すのではなく、メチルトランスフェラーゼSETD3を一時的に抑制する薬を開発し、予防につなげることを計画している。
カレット氏は、「われわれはすべてのエンテロウイルスとライノウイルスが依存する標的を特定した。これを取り除けば、ウイルスの(感染の)チャンスは本当になくなる」と話した。
「これはとても良い第一歩。次の段階は、ゲノム編集を再現できる薬を作ることだ。この開発は比較的、速く進むと思う」
一方、このたんぱく質がウイルスの自己複製でどのような役割を持っているのかは不明で、さらなる研究が必要だという。
■安全性の確認が必要か
多くの人にとって風邪は、命の危険というよりは不便さを引き起こす。しかし、ぜんそくを持つ人にとっては症状が悪化するきっかけにもなるほか、一部のエンテロウイルスは脳に到達するとまひを引き起こす可能性がある。
英ノッティンガム大学のウイルス学者、ジョナサン・ボール教授は、この研究は「的確」なものだが、運用が安全かどうかをはっきりさせなくてはならないだろうと指摘した。
「宿主のたんぱく質を標的にした治療の開発に注目が集まりつつある。汎用(はんよう)的な抗ウイルス薬の開発の大きな障害となっていた、ウイルスの突然変異を克服できる可能性があるからだ。しかしウイルスは当然、適応力が高く、宿主標的治療でさえ、それをそう長くは抑えておけない可能性は十分にある」
(英語記事 Common cold stopped by experimental approach)
https://www.bbc.com/news/health-49682583
https://www.bbc.com/japanese/49723768