福島県の東京電力福島第一原発事故を巡り、
業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久・元会長(79)ら旧経営陣3人に対し、
東京地裁(永渕健一裁判長)が19日午後、判決を言い渡す。

公判では、検察官役の指定弁護士が3人に禁錮5年ずつを求刑し、弁護側は無罪を主張した。
検察が刑事責任を問えないとした3人について、裁判所がどう判断するかが注目される。

他に判決を言い渡されるのは、原発担当役員だった武黒一郎(73)と武藤栄(69)の両元副社長。

起訴状では、3人は高さ10メートルの敷地を超える巨大津波の襲来を予見できたのに対策を怠り、
東日本大震災の津波で事故が発生。

「双葉病院」(福島県大熊町)の入院患者らに避難を余儀なくさせて44人を死なせたほか、
爆発した原発のがれき片などで自衛官ら13人にけがを負わせたとしている。

公判では、
3人が巨大津波を予見できたか
予見できた場合、事故を防ぐ対策を取れたか――が主な争点となった。

指定弁護士は、武藤、武黒両被告が震災前の2008年6月〜09年5月、東電の子会社が算出した
「最大15・7メートルの津波が襲来する」との試算結果を把握し、
勝俣被告も09年2月の会議で、14メートル程度の津波が来る可能性を聞いていた点を重視。
これらの情報を基に防潮堤の設置や原発の運転停止などの対策を講じていれば、事故を回避できたと主張した。

弁護側は、試算結果の基となった国の「長期評価」について「専門家から『根拠に乏しい』と指摘されており、信頼性がなかった」と主張。
「津波は誰も予想できなかった規模で、対策を講じても事故は防げなかった」と反論した。

3人については、東京地検が2度、不起訴としたが、
東京第5検察審査会が「起訴すべきだ」と議決し、指定弁護士が16年2月に強制起訴。
初公判は17年6月に開かれ、計21人の証人尋問や被告人質問などを経て今年3月に結審していた。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20190919-OYT1T50120/