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福岡
天神・警固公園に謎のマット 迷惑行為に苦肉の策
2019/9/20 6:00
西日本新聞 ふくおか都市圏版


 福岡市・天神の警固公園に謎の物体が出現? 取材班が駆け付けると、園内のど真ん中に黒い大きなマットが何枚も敷かれていた。シックな石畳を彩るデザインか、それとも何か散乱した跡か。公園を管理する市中央区役所に聞くと、8月中旬に設置したという。一体何のために−。

 公園(約1・1ヘクタール)西側の通りにつながる通路付近。約1メートル四方の正方形と、長さが2倍ある長方形のマットが不規則に並ぶ。厚さ約3センチのゴム製で、その数12枚。剥がれないよう接着剤で地面に固定されている。
 「実は、スケボー族対策の秘密兵器です」。区役所は、園内でスケートボードや自転車で遊べないようにするための障害物だと説明する。

 3年前から、夕方になるとスケボーを抱えた若者たちが現れ、近くに休憩している市民がいてもわが物顔で滑走。自転車で曲芸の練習をする者もいて、いつも明け方まで騒ぐという。事故の報告はないが、「ぶつかりそうで危ない」「通行の邪魔」と苦情が相次いでいる。職員や警備員が近づけば「死ね」と悪態をつき、警察官の注意も一時退散でかわす。そこで最近、ゴムマットを設置したわけだ。
 効果はどうか。夜間に訪れるとスケボー族はいた。マットの脇を滑走したり、ターンしたり、ボードごとジャンプしたり。周りには日中以上に多くの市民がいた。区役所の担当者は肩を落とし、意外な言葉を口にする。

 「7年前のリニューアルで平穏を取り戻した結果、彼らを引き寄せたのかも。周りに人が多いほど熱くなるから」

 警固公園は2012年に約3億8千万円かけて改修された。目的は防犯対策の強化だ。それまで強引なナンパやキャッチセールス、痴漢などが続発。これを受け、築山の撤去、樹木の伐採、公衆便所の移設で死角をなくしたところ、被害は激減したという。

 「夜は成人男性でも安易に近寄らなかった公園」だったが、今では中高生でも学校帰りに気軽に立ち寄れる場所に生まれ変わった。それなのに、平穏が新たな迷惑行為を引き寄せるとは皮肉な話だ。

 さらに改修後は放置ごみが急増しているという。昼はタピオカドリンクなどの容器、夜は飲酒する“宴会族”が残す瓶や缶、総菜などの包装が散乱する。「とりわけ深刻なのは週末。軽トラック1台分のごみが放置されている」

 中央区役所が管轄する公園は157カ所。大半の管理費は年間30万〜40万円だが、警固公園だけは同800万〜900万円と突出する。担当者はぼやく。「天神のど真ん中の公園でにぎわいと秩序を両立させるのは至難の業。妙案はないものか」(木村貴之)