日本銀行の黒田東彦総裁は19日の記者会見で、海外経済の下振れリスクが高まっていることを何度も強調し、必要があれば追加の金融緩和に踏み切る姿勢をさらに強めた。

 黒田氏の発言から今後の金融政策や国内外の経済の展望を探る。

 「追加緩和について前回の会合時より前向きになっているのかといわれれば、その通りだ」

 欧米の中央銀行がそろって金融緩和を拡大する中、日銀の金融政策に変化がなければ、外国為替市場では円高圧力が強まるとも予想される。米中貿易摩擦の激化に歯止めがかからず、さらに円高が進むと、輸出主導型の日本経済への打撃は不可避で日銀は円高回避に向けた追加緩和に動く可能性が高まる。

 緩和に「より前向き」な姿勢を示した黒田氏の発言は、円高リスクを懸念する市場関係者の追加緩和期待を後退させない狙いもありそうだ。

 「消費マインドはいろいろなところで影響される」

 消費税増税前の駆け込み需要の反動減対策として、政府は軽減税率の導入や自動車、住宅購入への税優遇措置などの景気対策を予定している。こうした対策を踏まえ、黒田氏は「増税で国内経済が影響を受けるとは思わない」との見解を示した。ただ、老後2千万円問題や天候不順など消費マインドを下押しする要素もあり、日銀内でも「景気が減速すれば政府の財政政策が必要」との声はある。

 「欧州中央銀行(ECB)と比較すれば日銀の方が政策余地がある」

 日銀の政策金利はマイナス0・1%。12日に政策金利をマイナス0・5%に引き下げたECBと比べても「深掘り(拡大)余地がある」と強調した。

 だが、長期にわたり金融緩和を続けてきた日銀は「追加緩和の余地が乏しくなっている」というのが一般的な見方だ。黒田氏は追加緩和手段として長短金利引き下げや資産買い入れ拡大などを挙げるが、緩和による金融機関の利ざや(貸出金利と預金金利の差)縮小など副作用も大きい。

 「個人の預金金利がマイナスになる可能性はないと思っている」

 日銀が追加緩和でマイナス金利拡大に踏み切った場合、収益がさらに下押しされる銀行業界では預金者から手数料を取って金利を実質的にマイナスにする「口座維持手数料」の導入を検討する動きがある。黒田氏は「個々の銀行の経営判断」と賛否について明言を避けたが、超低金利下で経営に苦しむ地方銀行などでは導入に向けた検討が広がる可能性もある。導入されれば銀行口座の解約が進み、タンス預金が増える可能性も。消費者心理の低下にもつながりかねない。(西村利也)

2019年9月19日 20時28分 産経新聞
https://news.livedoor.com/article/detail/17107717/
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