昭和天皇が天智天皇の大化改新の精神を回顧され、また百済救援の役での敗戦復興という故事を踏まえられたからこそ、我が国は世界規模での大戦での敗北から立ち直ることができたのである。

むろん祖国再生にあたって、戦勝国からの文化を取り入れることについては賛否もあろう。戦後70年を経て、そのことによる弊害は今になって生じている。残念ながら表面的な「復興」が、敗戦直後の日本人の苦い認識を忘却させてしまった側面は否めない。

終戦直後、米内光政は、昭和天皇から「日本再建には300年かかるであろう」との御言葉を賜っている。

「300年」とは如何なる根拠に基づくものなのか。生物学者でもあられた昭和天皇が、単なる思いつきでこの様な御発言をされるはずはない。

詳しくは本書に譲るとして、「復興までに300年かかる」と仰せられた先帝の歴史認識の重さを、今こそ再び噛みしめる時である。