うわ・・・思い出した
計算すると27年前になる。兵庫県某所にある一軒家にSさんという50代頃の女性が住んでいた。
旦那さんに先立たれてから精神的にまいった様で言動がおかしくなっていった。
元々は明るくて上品な奥さんだったのに、髪の毛はボサボサで化粧もしなくなり、二階の窓から外を覗いては敷地に面した道を歩く人に暴言を投げかけるなどの変わりよう。
誰も話しかけなくなっていた。
ある日、Sさん宅の前を通るといつものように窓から覗いて通行人を見ている。
畑やスーパーに行く為にはその道を通らないとかなり遠回りになるので、みんな通るのだ。
近所の人たちが道で話し込むと度々Sさんがまた怒鳴っていたという会話になるほどだったが、その日はこちらを覗くだけで何も言わなかったので珍しい事もあるもんだと一様に不思議がっていた。
すると翌日も何も言わない、翌々日も何も言わずに窓の外を虚ろな表情で眺めるばかり。
Sさんが何も言わなくなってから3日、4日経った頃だった。
S宅の前に饐えたような匂いが漂い、冬が近いというのに小蝿が飛び回りだした。
不審に思った住人数名でS宅に近寄ると先頭のオッサンが声をあげた。「あらあ見てみ、紐で吊っとるわ」
首を吊ると体内で循環されなくなった水分が穴という穴から外に垂れてくるのだが、着物に染みこんだ重みで首が伸び、紐が見えていたのだ。