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1階で寝ている母に手は届かなかった−。台風19号による川の氾濫で福島県いわき市の自宅が浸水し、
母親の大内寿美子さん(100)を亡くした次女の鈴木良子さん(68)は「まさかこんなことになるとは」と悔やむ。
いつも元気で、21日には101歳の誕生日を迎えるはずだった。
 
13日午前3時ごろ、自宅の2階で寝ていた鈴木さんは「ボコボコ」という音で目覚め、浸水に気付いた。
大内さんの寝室は1階。飛び起きたが、既に階段の中ほどまで水が迫っていた。
 
真っ暗闇の中、手すりを頼りに降りようとしたが、3メートルほど進むと首まで水に漬かり、引き返した。
「もう駄目かもしれない」。翌日、鈴木さんらは救助されたが、母は帰らぬ人となった。周辺一帯は水没し、湖のようになっていた。
 
鈴木さんによると、大内さんは5人きょうだいの長女で「しっかり者で、何でもこなす人だった」。
料理が好きで、親戚の集まりなどのたびに作ってくれたちらしずしは思い出の味だ。昨年までは自力で歩くこともでき、
バラの栽培や手芸、近所の友人とのお茶会を楽しむ日々だったという。
 
12日の夜、普段通り一緒に夕食を取り、午後8時に寝る母に鈴木さんは「おやすみ」と声を掛けた。
「こんなことになるとは思わなかった。まだ気持ちが付いていかない」。遺体はあまり水を飲んでおらず、
死因は低体温症といい、「眠るように、苦しまずに亡くなったのなら救いだ」と話す。
 
「もうすぐ誕生日を迎え、まだまだ元気に生きることができたはずなのに」。母との突然の別れに、鈴木さんは言葉を絞り出した。


台風19号により自宅が浸水し、100歳で亡くなった大内寿美子さん(遺族提供)
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