10/20(日) 11:06配信
デーリー東北新聞社

 最近、耳にする機会が多くなった「子ども食堂」。家庭の事情などで十分に食事が取れない子どもたちに無料または低価格で食事を提供する目的で始まったが、今では地域交流の場としての役割も担っている。北奥羽地方でも徐々に増えている一方、「子ども食堂=貧困」との認識がいまだに根強い上、費用や場所、マンパワーなど運営面でボランティアに任せきりになっているのが現状だ。地域に定着させていくには、子ども食堂のさらなる普及と運営しやすい環境の整備が課題となりそうだ。

 NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ(東京都)の調査によると、こども食堂は19年6月現在で全国3718カ所で実施。青森県は16カ所で、普及の指標となる小学校数に対する食堂数の割合は5・6%と全国ワースト2位。十分に普及しているとはいえない状況だ。

 青森県南、岩手県北地方では8カ所で実施し、運営主体は社会福祉法人やNPO法人が多い。いずれも子どもに限定せず、親子や高齢者ら幅広い年代を対象にしているのが特徴だ。

 八戸市の社会福祉法人東幸会が毎月第2日曜に、同市大久保の同法人施設で運営する「ふれあいカフェ 大久保の里」は、子どもたちも調理に参加できるようメニューを工夫。同法人相談支援センター東幸園の晴山久寿センター長によると、子どもを中心に地域住民の参加はもちろん、リピーターも多い。中には食堂での交流を通して引きこもりを解消した親子もいるという。晴山センター長は「地域の人が家に帰るような感覚で集まり、家族団らんのように過ごせる場にしていきたい」と力を込める。

 洋野町種市の三区むつみ館で毎月第4土曜の夜間に開催する「むつみ子ども食堂」は、自営業の澤國子さん(70)と娘の由紀子さん(57)がボランティアで運営。0〜93歳まで幅広い年代の地域住民らが集まり、世代間交流も盛んだ。1人暮らしの高齢者も多く参加するなど、地域コミュニーティの場として欠かせないものになっている。

 毎回参加しているという同町の女性(83)は「みんなで食事ができる機会ができてうれしい」と声を弾ませる。國子さんも「食堂を始めたからこそ知り合えた人もたくさんいるし、張り合いになっている」と楽しげだ。

 食事は國子さんの友人らがボランティアで準備している。今のところ経費で困っていることはないが、気掛かりなのは、マンパワーの確保だ。由紀子さんは「運営側も高齢になってきていることもあり、体力的に不安を感じることもある」と本音をこぼす。

 「子ども食堂推進プロジェクトin八戸」代表で、八戸学院大健康医療学部の佐藤千恵子准教授は、取り組みやすい環境の整備を訴える。他県では行政が助成に乗り出したり、企業などからの寄付が盛んだったりと地域全体で盛り上がりがあり、青森県内は環境整備が十分とは言えないという。

 佐藤准教授は「子ども食堂=貧困」というイメージがいまだ根強いことも課題に挙げる。「食堂の利用を貧困の子どもに限定すると参加しづらい家庭もある。誰でも集まれるオープンな場所にすることで、本当に困っている人も気兼ねなく参加でき、支援を行き届かせることができる」と強調。

 将来的に地域の過疎化などから、資金面や人材の確保が困難になってくる可能性を指摘し、「正しい認識に基づいて地域全体で支援の輪を広げていくと共に、担い手を育成していく必要がある」と訴える。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191020-00010003-dtohoku-l02