10/24(木) 5:00 神奈川新聞
 神奈川県川崎市は23日、台風19号で水位の増した多摩川の水が地中の排水管をつたって逆流する現象が市内5カ所で起こっていたことを明らかにした。浸水エリアはこの5カ所で計92ヘクタールに及ぶという。排水管の出口部分には水門もあったが、市は雨水の排水が滞ることを懸念して閉門しなかった。結果的に広範囲に浸水被害が発生したことから、市は一連の判断について検証するとしている。

 市は23日現在で、計1994件の罹災(りさい)証明の申請があったと発表した。大半が浸水による被害とみられる。市内では多摩川の氾濫がなかったにもかかわらず大規模な水害が発生。いまだに被害の全容はつかめておらず、被災戸数は今後さらに増える可能性もある。

 市下水道部によると、市内の街中には雨水を流す排水管が地中に埋設されており、多摩川に注ぐ排水管の出口は17カ所ある。このうち山王(中原区)、宮内(同)、諏訪(高津区)、二子(同)、宇奈根(同)の計5カ所の排水管で逆流が確認された。

 平時の多摩川の水位は管の出口より低いが、今回は多摩川で史上最高の水位を観測。管の出口が水没して逆流現象が起き、排水管の延長線上にある地域のマンホールからあふれ出たとみられる。深い所では2メートルの冠水が確認され、武蔵小杉周辺では駅の改札口や一部の高層マンションも浸水被害に遭った。

 管の出口部分には逆流を防ぐ水門も整備されている。しかし当時は大雨警報が発令中で、市は雨水を排水できなくなる恐れがあると判断し、開門を継続する措置を取った。同部は「降雨状況と水位は刻々と変化しており、非常に難しい判断だった」と釈明した。

 このうち山王排水管の水門については、近くにあるポンプ場が水没する危険があったため、雨がおさまった12日午後10時52分から閉門を試みたが、何らかの理由で閉まらなかった。最終的に水門が閉まったのは13日午前10時50分だった。水門は手動で通常なら1分ほどで開閉できるという。

 市は今後、逆流の経緯や水門操作について検証し、被害を最小化する方策を検討する方針。また、浸水被害地域を対象に検証結果の説明会も行うとしている。
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