https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191116-00000521-san-pol

東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から、12日で1カ月を迎えた。
71の河川、140カ所で堤防が決壊し、治水の重要性を浮き彫りにした。
一方、旧民主党政権で国土交通相を務め、群馬県の「八ツ場ダム」建設凍結を決めた
国民民主党の前原誠司衆院議員や、「スーパー堤防」に異論を唱えた立憲民主党の
蓮舫副代表と共産党の吉良佳子参院議員は批判も浴びた。各氏は現在、どう考えているのか。

■「番長」に感謝!?

「間に合ってよかった」「ヒーローだ」。八ツ場ダムをめぐっては、インターネット上でこうした賛辞が相次いだ。

八ツ場ダムは今年6月にほぼ完成し、10月1日に「試験湛水(たんすい)」を開始した。
3〜4カ月かけて満水とする予定だったが、台風19号に伴う雨水約7500万立方メートルが流れ込み、ほぼ満水になった。
赤羽一嘉国交相は「(下流の)利根川の危機的な状況を救った」と評価した。

下流域での増水量から、八ツ場ダムの治水効果を限定的だとみる意見もあるが、「間に合った」との感想が相次ぐのは、
旧民主党政権のいきさつを踏まえたものだ。旧民主党は平成21年の衆院選で、公約の最重要政策の一つに
八ツ場ダム建設中止を掲げて政権交代を果たし、鳩山由紀夫政権が誕生した。当時の前原国交相は中止を宣言したが、
23年に野田佳彦政権が撤回した。

産経新聞などは前原氏を、言葉が先行し結果が伴わないという意味を込めてたびたび「言うだけ番長」と表現し、前原氏は反発した。
いまとなってはむしろ、前原氏が「言うだけ番長」だったことに感謝すらすべきかもしれない。

今月7日、前原氏に(1)八ツ場ダム建設中止の判断は政治的に正しかったのか(2)八ツ場が台風19号において果たした
役割についてどう考えるか(3)ダム建設は無駄なのか(4)災害が激甚化するなか、今後の治水政策はどうあるべきか−を文書で質問した。
前原氏は事務所を通じて「日程的に都合が付かない」とした。

■「スーパー堤防」仕分け

台風19号の大雨では多摩川が氾濫し、東京都世田谷区の二子玉川地区や川崎市の市街地などが浸水した。
インターネットで注目されたのが、22年、行政刷新担当相だった蓮舫氏の事業仕分けでの発言だ。

「いまスーパー堤防(を)やろとしているところは、二子玉川沿いを視察に行かせていただきましたけど、すでに堤防が整備されて、
その上でまちづくりという機会があればさらにスーパー堤防化しよう。つまり、ダブルで大切にしている。つまり住宅、人口密集地だから、
やりたいという思いは分かるんですが、優先順位が違うと私は思うんですが、いかがでしょう」

ネット上では蓮舫氏が「二子玉川沿いの治水は不必要」と言ったと誤解や曲解をされ、広まった。

「スーパー堤防」は首都圏や近畿圏の6河川の沿岸を、堤防の川の反対側の土地の住民に一時離れてもらい、土地をかさ上げして改良し、
なだらかな丘にする形で堤防を強化する事業だ。整備した土地には集合住宅や公園などを造る新たな街作りも伴う。

昭和62年に始まったが、住民の一時退去が必要なことなどから、400年・約12兆円の経費がかかるとされ「スーパー無駄遣い」
と批判を浴び「事業廃止」との結論が下された。

台風19号で多摩川が氾濫した二子玉川地区は、住民の反対で堤防が整備されていなかった場所であり、
蓮舫氏の発言とは直接関係はなかったといえる。

似たような批判を受けたのが吉良氏だ。吉良氏は26年2月の参院総務委員会で、東京都江戸川区の事業をめぐり
「スーパー堤防という事業は必要ない事業だ」と述べた。

江戸川区など荒川と江戸川に囲まれた「江東5区」(ほかは江東、墨田、葛飾、足立)は、「海抜ゼロメートル地帯」に位置し、
河川が氾濫すれば、浸水が10メートルに達する地点もある。人口が多い地域で、人的、経済的な被害は甚大だ。江戸川区は今年5月、
「ここにいたらダメ」と呼び掛けるハザードマップを作成し、話題となった。台風19号では政府高官も荒川の氾濫を「心配していた」と話す。

吉良氏は堤防事業そのものを止めようとしていたのではなく、江戸川沿いの特定の地域のスーパー堤防事業に関し
「短い期間で土地から追い出すような暴挙に及んでいる」などと主張し反対していた。ちなみに、その地点でのスーパー堤防は完成している。