「仏教と離れた神道は、神社の格を上げるために、国家が直接祭祀を司るようになります。そして、神社祭式(明治40年)によって
祭祀のあり方が規定されるのです。神社祭式の中で、拝礼の仕方として、再拝、拍手が記されています。再拝というのは、
二度続けて深くお辞儀することです。現在の二礼二拍手一礼という作法の元になったと言われているのが、伊藤博文が推奨したという
“一揖(ゆう)再拝二拍手一揖”。伊藤氏がこれを正式な作法とすると発言したと伝えられていますが、確認はされていません。
“揖”とは上体をやや前に傾けて行う礼で、頭を深く下げて行う“拝”のほうがより丁寧な礼になります。ただし、この神社祭式で定められた作法は、
神職が祭事に臨むときに行われるもので、一般の人に対して勧められたものではありません」

ではなぜ、現在の神社は、一般の参拝者に対して二礼二拍手一礼を勧めるのか。

「日本は高度成長期の頃から、盛んに初詣をするようになりました。有名な神社では何時間も並ぶわけですが、
できるだけ早く参拝を終わらせるために、祈る間がない、二礼二拍手一礼を取り入れたのかもしれません。伝統的な作法ではないのに、
いつの間にかしきたりになってしまった典型的な例と言えますね」

二礼二拍手一礼は、あくまで高度成長期の頃から広まったにすぎない。合掌だけでも何の問題もないそうだ。