宇宙が誕生したばかりの頃は水素やヘリウムといった元素しか存在せず、それより重い元素(以下「重元素」)は恒星の内部で生み出されたとされています。今回、南米の「アルマ望遠鏡」の観測データをもとに、初期宇宙の銀河において重元素がどのように広がっていたのかを明らかにした研究成果が発表されました。

■星々が集まる銀河を大きく越えて広がっていた

人間の呼吸に欠かせない酸素や文明活動を支える鉄をはじめとした重元素は、もともと宇宙には存在していませんでした。重元素は水素とヘリウムでできた最初期の恒星が内部で核融合を続ける過程で生成され、超新星爆発とともに宇宙へまき散らされていったと考えられています。

今回、藤本征史氏(コペンハーゲン大学、研究当時は東京大学宇宙線研究所)らの研究チームは電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」の観測データを使い、宇宙の初期(およそ138億年前の宇宙誕生から数えて約7〜11億年)に存在していた銀河における重元素の分布状況を調べました。

研究チームは、当時存在していた重元素のなかでも電波で検出しやすい炭素ガスに着目しました。検出しやすいとはいえ微弱にしか捉えることができない炭素ガスの分布を浮かび上がらせるべく、初期宇宙の18個の銀河に対する観測データを重ね合わせてみたところ、当時の銀河そのもののサイズを大きく越えた、差し渡し6万光年ほどの範囲に渡って炭素ガスが広がっている様子が初めて明らかになりました。

この結果を受けて、研究チームは最新の理論に基づいた複数のシミュレーションを行いました。ところが、アルマ望遠鏡によって観測されたような銀河をも取り囲む広大な炭素ガス雲は、どの理論を用いても再現できなかったといいます。研究に参加したアンドレア・フェラーラ氏(ピサ国立大学)は「宇宙初期における巨大な炭素ガス雲の発見は、これまで理論モデルで欠けていた新しい物理機構を要請する結果となりました」とコメントを寄せています。

研究チームは、宇宙初期の銀河に対する詳細な観測を今後も継続して、予想外の巨大な炭素ガス雲が形成された仕組みの解明を目指すとしています。

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