https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012218371000.html


「線虫」でがん早期発見 検査技術実用化 東京のベンチャー企業
2019年12月17日 18時31分医療

嗅覚が優れた「線虫」という生物に、ヒトの尿のにおいをかがせて、がんを早期に発見する検査技術の実用化に成功したと東京のベンチャー企業が発表しました。これまでに行った臨床試験ではがんかどうかを高い精度で見分けられたということで、年明けから各地の医療機関で受けられるようにするとしています。

東京のベンチャー企業、「HIROTSUバイオサイエンス」は、目がない代わりに嗅覚が発達していて、がん患者の尿のにおいに集まる特性を持つ、体長1ミリほどの「線虫」を使って、がんを早期に発見する技術の開発を進めてきました。

全国の大学や医療機関で臨床試験を行った結果、1滴の尿から、極めて早期のがんでもおよそ85%の確率で発見できたということで、17日、会社の代表が技術開発に対する助成金を出した福岡県を訪れて実用化に成功したと報告しました。

早ければ来年1月から各地の医療機関で1万円ほどを負担すれば検査を受けられるようにするということで、どこで受けられるかは今後、会社のウェブサイトで公開するとしています。

この検査では、がんかどうかは分かるとしていますが、がんの種類までは分からないということで、別の検診や検査で確認することが必要だということです。

広津崇亮代表取締役は「がん検診の受診率の向上にこの新技術が役立つことを期待しています」と話しています。

線虫を使うがん検査とは

「線虫」は、土の中や海の中に生息するものや、人に寄生するものなどさまざまな種類が自然界に存在します。

今回、がんを早期発見する技術に使われたのは、主に土の中に生息し、生物学の研究でも広く使われる「シー・エレガンス」という線虫を利用しました。

この線虫は、目がない代わりに嗅覚が発達していて、この嗅覚で餌を見つけたり、天敵を避けたりします。

線虫ががん患者の尿に集まる詳しいメカニズムは分かっていませんが、大腸菌やバクテリアといった「線虫が好む餌のにおい」と、「がん細胞から出る特有のにおい」が似ているためとみられています。

検査では、プレートに置いた1滴の尿に線虫がどれぐらい集まったかを数えて、がんがあるかどうかを判定します。

胃がんや大腸がん、それに乳がんなど合わせて15種類のがんがあるかどうかが分かるということですが、どの種類のがんなのかは判別できないためさらに詳しい検査が必要です。

会社によりますと、がんが臓器の一部にとどまっているステージ1までの早期のがんの場合、「腫瘍マーカー」と呼ばれる血液を使った検査方法だと発見される確率は10%程度ですが、線虫を使った検査ではおよそ85%の確率で発見できたということです。

会社では、がんの種類を判定する特殊な線虫を開発するなど、さらに研究を進めるということです。

がん早期発見のメリットと課題
(リンク先に続きあり)


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/K10012218371_1912171821_1912171831_01_02.jpg