安倍政権の経済政策はもはやマヒ状態だ。日銀と5頭のクジラが株価を買い支え、官製相場で景気を粉飾している。

 米中貿易戦争に一喜一憂しても無意味だ。いまの交渉は、関税引き上げの一部凍結や一時的な米国産農産物輸入のディールだけ。これは一時休戦にすぎない。米中貿易戦争の下、日本の輸出額は2018年度下半期からマイナスに転じ、減少が続く。

 おまけに最悪のタイミングで消費増税。駆け込み需要の反動で実質家計消費はマイナス5・1%に落ち込んだ。12月の日銀短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が前回の9月調査から5ポイント悪化してゼロとなった。悪化は4四半期連続だ。

 経済政策は支離滅裂の一言に尽きる。消費増税による税収増は軽減税率分を除くと4・6兆円なのに、赤字国債や財投債の発行で13兆円の借金をつくり、26兆円の経済対策を打つという。対策の中身は小中学校に1人1台のパソコン支給とか、効果が疑わしいものばかり。安倍政権はスローガン政治で“やってる感”を演出してきたが、すべて失敗し、タネ切れになった。

 政権そのものもマヒ状態に陥っている。臨時国会閉会後の安倍首相の会見では提灯メディアがヤラセ質問をするだけで、「桜を見る会」についてはロクに説明せずにオシマイ。菅官房長官は会見で前夜祭問題を8回突っ込まれると、「承知していない」「知らない」を5回も繰り返し、「首相が国会で答弁されたと思っている」と5回も逃げた。安倍が公選法、政治資金規正法に違反した疑いは濃厚で説明しようがないのだ。

 首相を筆頭に政権周辺では何でもあり。菅原一秀前経産相、河井克行前法相と河井案里参院議員は明らかに公選法違反を犯しており、議員辞職が当然なのに、国会を欠席して雲隠れ。アベ側近の萩生田文科相は「身の丈」発言に続き、後援会が地元有権者向けにグラウンドゴルフ大会などの“赤字イベント”を毎年開催して公選法違反疑惑も浮上。アベ親衛隊の和泉洋人首相補佐官には公金不倫疑惑まで持ち上がる始末である。

 年明けに通常国会が始まれば、政権はあらゆる疑惑の説明を求められ、国会機能のマヒは必至だ。提灯持ちたちは「もっと大事な議論をすべきだ」とわめくが、内閣が犯罪者集団化したためむなしく響く。内閣総辞職は必然だが、自民党はかつてのような自浄作用が働かない。自民党の歴史的使命は終わった。強力な野党をつくるしかない。

19/12/18 06:00
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