群馬県内に住む女子生徒を連れ出して監禁し首などにけがを負わせたなどとして、殺人未遂や監禁致傷などの罪に問われた高崎市寺尾町、元私立学校教員の男(28)の裁判員裁判の判決公判が20日、前橋地裁であった。国井恒志裁判長は「死ぬ危険性の高いものだったと評価するには合理的な疑いが残る」と述べて殺人未遂罪については無罪とし、それ以外の監禁致傷などの罪を認定し懲役8年(求刑・懲役15年)を言い渡した。
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◎一方で「動機 極めて身勝手で自己中心的」非難

 判決理由で国井裁判長は、被告が女子生徒の様子を観察しながら首を絞めたことなどから、必要以上の危害を加えないために絞め付け行為の時間や強さを調整していたと指摘。生徒の自宅内に包丁を持ち込んだが使用しなかったことや、連れ込んだ車内では危害を加えていないことなども挙げた上で、「殺意があったとは認められない」と結論付けた。
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 一方、首を腕やタオルで絞め付けて失神させた行為は、「生命を奪う危険性が高いとまではいえないが、犯行態様は相当に強度。体の安全を侵害する危険性が高い行為だった」と指摘。学級運営で上司らから支援を受けることができず精神的に追い込まれていたという事情を考慮しても、「生徒に全く落ち度はなく、動機は極めて身勝手で自己中心的」と非難した。
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 この日の公判には、女子生徒の両親が被害者参加制度を利用して裁判を傍聴した。法廷内で被告と数メートルの距離で向き合う形となり、判決言い渡しの際、父親は両手を固く握り締めていた。
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 判決について、前橋地検の上本哲司次席検事は「判決内容を詳細に検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。一方、弁護側は報道陣の取材に「裁判員の皆さんの健全な市民感覚に従って判断していただいた。感謝している」と述べた。
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 判決によると、被告の男は6月25日午後0時半ごろ、女子生徒の自宅に玄関から侵入し、スタンガンを使用したほか、女子生徒の首をタオルや腕で絞めて失神させた。その後、生徒を車内に連れ込んで監禁し、首の切り傷や熱傷、顔の皮下血腫、結膜下出血で全治約3週間のけがを負わせた。


◎「話し合った結果」「どこか軽い印象」…裁判員が会見

 閉廷後、事件を審理した裁判員6人と補充裁判員2人が前橋地裁で会見した。
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 公判は被告の男が女子生徒の首を絞めた際の殺意の有無が争点となった。60代男性は「犯行状況を理解するのが難しかった」と説明。結果として判決では殺意を認めなかった。この点には「話し合った結果。妥当だと思う」と話した。
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 公判で被告は学級運営が円滑にいかず、追い詰められていたなどと説明していた。別の60代男性は教員の過酷な勤務状況を問題視した上で、「多くの先生が似たような状況に追い込まれている中、生徒を襲う罪の重さを考えれば罪のほうが重い」と指摘。30代男性は「(被告は)多弁だった。反省の意思も見えたが、どこか軽い印象もあった」と打ち明けた。
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◎「上司と部下の情報共有 見直す」…学校側

 被告の男が勤務していた学校法人は20日、上毛新聞の取材に「上司、部下の情報共有の在り方を見直さなければいけない。重く受け止め、教員の悩みを救い上げられるような仕組みや環境に改善したい」とした。判決は事件の経緯に関し、学級運営で悩んだ被告が上司らの支援を受けられずに追い詰められたとした。
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 事件後、同校は外部の有識者らでつくる第三者委員会を設置。課題を洗い出して再発防止策をまとめるため、現在、関係者から聞き取りを行っている。

12/21(土) 6:02配信  上毛新聞社
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191221-00010000-jomo-l10&;p=2