積水ハウス・地面師事件の「専門サイト」が…!
地面師事件騒動がいまだ収束しない不動産大手・積水ハウスをめぐって、そのコーポレート・ガバナンス体制について疑問視する動きが、アメリカの機関投資家の間で広がっていることをご存知だろうか。

この11月、「SAVE SEKISUI HOUSE」というウェブサイトが存在していることを筆者は確認した。

端的に言えば、積水ハウスのステークホルダーによる現経営陣を告発するサイトである。クレジットは「c2019 by SaveSekisuiHouse.」とあり、ごく最近、立ち上げられたサイトであることがわかる。

英語版と日本語版が存在しており、その「ミッション・ステートメント」(ウェブサイトの目的)には、次のような刺激的な文章が掲げられている。

〈SAVESEKISUIHOUSE.COMは、日本企業及びその他アジアに拠点を置く企業のコーポレート・ガバナンスの改善を目的とする情報ウェブサイトです。本ウェブサイトは積水ハウスの株主、従業員、あるいは積水ハウスを含む日本企業及びその他アジア企業のコーポレート・ガバナンスの向上・改善に関心のある方々からの情報提供を歓迎致します。本ウェブサイトでは、積水ハウスの一部取締役に対する地面師事件及びその後の情報隠蔽の責任を追及する株主代表訴訟に関して、情報を随時更新しておりますので、頻繁に本ウェブサイトを確認されることを推奨致します〉
この「ミッション・ステートメント」を読めば、このウェブサイトが、積水ハウスの地面師事件とそれにかかわる一連の内紛劇を問題視していることがわかる。

日本企業について英語の専門ウェブサイトが立ち上がり、こうして問題提起していること自体が事の深刻さを物語っているといえるだろう。


※略

米専門家の警告「会長解任は衝撃だった」

米中貿易摩擦が深刻化した今、その代替投資先として欧米の長期マネーは再び日本のマーケットに注目し始めている。この12月にはアメリカの機関投資家と、経団連に加盟する金融機関や年金基金などの機関投資家との間で、日本のコーポレート・ガバナンスの状況についての意見交換も行われた。

とある機関投資家の訪日団には、一人の米国弁護士が同行していた。ウィリアム・W・ウチモト氏――。彼は米証券取引委員会(SEC)の弁護士やフィラデルフィア証券取引所の法務責任者を歴任した、コーポレート・ガバナンス分野が専門の弁護士である。

積水ハウスの問題を当初からウォッチしているウチモト氏は筆者の取材にこう答えた。

「アメリカでは、財務諸表に何か重要な情報を出すことを失念しただけで、意図的に虚偽の情報を出すことと同じくらい重大な問題と捉えられます。だからこそ積水ハウスで起きていることは、我々にとって衝撃的だったのです。昨年の取締役会での評決の結果、調査報告書の結果に基づき対応しようとした(和田勇)会長は、辞めざるを得なかったわけですが、アメリカではそういうことは起きなかったでしょう。これはSECがそれを直ちに調査し、忠実義務に反して行動した取締役に対して対応する事例だと思います」

日本では今年、ガバナンス問題として日産自動車や関西電力の問題が大きく報道された。それと同列に、アメリカの投資家や専門家は、日本ではさほど注目されなかった積水ハウスの問題を捉えている。

筆者は「SAVESEKISUIHOUSE.COM」をはじめとしたアメリカでの動きについて積水ハウスに認識を問い、また阿部会長にインタビューを申し込んだ。

同社は「係属中の訴訟について法廷外でこのような行為がなされていることは、大変に遺憾に存じます。弊社は係属中の訴訟に関連する個別の質問への回答は差し控えさせていただきます。また、阿部もインタビューに応じる意向はございません」と回答した。

阿部会長ら積水ハウスの取締役は来年4月の株主総会で改選を迎える。積水ハウスの地面師事件は、海外投資家の厳しい視線を受けて、新たな展開を迎えようとしている。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69433
2019.12.30