→ラパ・ヌイのラノ・ララク採石場では島のモアイ像の9割近くが造られていた
→この採石場の土壌を調べたところ、非常に栄養素が高く、農作地としても利用されていたことがわかった
→モアイ像の採石は、その行為自体が土壌に栄養素を送り込む役割があり、これがモアイ信仰に結びついた

イースター島は南米チリの西に浮かぶ太平洋上の火山島です。現地の言葉でラパ・ヌイと呼ばれるこの島には、なんとも奇妙なことに、石のモノリス「モアイ像」が大量に建てられています。

大量のモアイ像は多くの人々を魅了し、島の名物となっていますが、かつての島の住人たちがなぜここまで狂ったようにモアイ像を造りまくったのかは謎に包まれていました。

モアイ像の造られた理由には、「祭祀目的」「墓碑」「島の支配者たちの権威を示す」など様々な説が唱えられていますが、明確な理由はわかっていません。

しかし、新たな研究は、モアイ像が大量に生産された理由に科学的な裏付けを発見したと報告しています。

それによると、モアイ製造の中心地であったラノ・ララク採石場は、農耕地でもある非常に肥沃な土地であり、採石行為自体が土地の栄養を保つのに役立っていたというのです。

この論文は、米国カリフォルニア大学の考古学者Jo Anne Van Tilburg氏率いる「Easter Island Statue Project(EISP、イースター島モアイ像プロジェクト)」の研究チームより発表され、考古学に関する科学雑誌『Journal of Archaeological Science』に掲載されています。

New excavations in Easter Island’s statue quarry: Soil fertility, site formation and chronology
https://doi.org/10.1016/j.jas.2019.104994

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■肥沃な採石地

ラノ・ララク採石場は島にある1000体近いモアイ像の95%が造られた場所です。
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ここは火山由来の岩石、凝灰岩が多く、石像を掘り出すのが容易であったことがモアイ像制作の中心地となった理由と考えられていました。

しかし、今回の研究では、この採石地が単に彫像建築の場であるだけではなく、生産的な農業地域でもあることがわかったといいます。

この事実を見つけたのは、テネシー州サウス大学のSarah C. Sherwood氏です。彼女は好奇心からモアイ発掘時に周辺土壌のサンプルを持ち帰り、精密な検査を行いました。すると、この地域が非常に肥沃な土壌であり、かつてはバナナや、タロイモ、サツマイモなどの食料生産地でもあったことがわかったのです。

この土地の土壌は、リンやカルシウムなど、植物成長に必須となる元素が高レベルで含まれていました。

島の他の土地は、土壌が急速に消耗され、植物を養う能力を失っていたのに対して、ラノ・ララクは採石された岩石の破片が絶え間なく流れ込むことで、土壌の栄養素がフィードバックされていたのです。

これは採石場周辺に、大量に置き去られたモアイ像の考え方についても、根本的に変えるものだと言います。

モアイ像は台座に乗せられ、島の周辺に飾られているものも多いため、基本的に全て採石場から運ばれることが前提と考えられていました。しかし、採石場の周辺が農業地であり、島の生活を支える場になっていたとなると、話は変わってきます。

つまり採石場そのものが島民にとって神聖な場であり、それを示すために大量のモアイ像が飾られていたのです。

採石場のモアイ像は置き去りにされたのではなく、これが正しい設置場所であり、島民たちはモアイがここに存在することで土地が肥沃さを保ち農業生産を支えると信じていたのです。

事実、土壌の成分からモアイ像を切り出して造る行為自体が、この地域の土壌を豊かにしていました。ただの迷信で大量のモアイ像を造っていたわけではないのです。

続きはソースで

https://nazology.net/archives/48927