【モスクワ時事】ロシアのプーチン大統領がエリツィン大統領(当時)の電撃辞任により大統領代行に任命され、権力を握ってから31日で20年となる。長期政権に対する鬱憤(うっぷん)や経済低迷への不満が国民の間で募る中、プーチン氏はロシアの前身であるソ連の第2次大戦の勝利をたたえて求心力維持を図る姿勢を強めている。欧米との関係改善も進んでおらず、プーチン政権の2020年は停滞が続きそうだ。

 プーチン氏は12月、第2次大戦に関する自身の歴史認識をたびたび披露した。20日には旧ソ連構成国の首脳らの前で50分以上も持論を展開。24日の国防会議でも、ポーランドがナチス・ドイツの独裁者ヒトラーと「実際は結託していた」と述べ、ユダヤ人迫害に加担していたと主張した。ソ連の影響下にあった東欧でソ連軍をたたえる記念碑の撤去が相次いでいることについて「ヒトラーと対話したようなやからが今日、欧州をナチスから解放したソ連軍の記念碑を撤去している」と強く非難した。

発言の背景には、20年5月にモスクワで開催される対ドイツ戦勝75年記念行事がある。プーチン政権は行事に並々ならぬ意欲を燃やしており、安倍晋三首相のほか、トランプ米大統領やマクロン仏大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長らを招待。各国首脳を集めて大々的に行事を開催することで国内の求心力維持と対外関係の改善を図ろうとしている。

 第2次大戦の勝利を政権のよりどころとするプーチン氏の姿勢について、政治評論家フョードル・クラシェニンニコフ氏は有力紙ベドモスチに対し「20年間権力の座にあっても、プーチン氏は自らの内外政策を正当化する他のやり方を見つけられなかった」と指摘。「ロシアの未来のビジョンや自らの政権の業績を示すより、75年前の戦争の成果を守るために力を注ぐことを選んだ」と分析した。

 プーチン政権は北方領土の実効支配も「第2次大戦の結果」と主張している。政権が愛国心をあおる限り、新しい年も北方領土問題を含む日ロの平和条約締結交渉の進展は厳しそうだ。

時事通信 2019年12月31日07時11分
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