0001首都圏の虎 ★
2020/01/02(木) 09:35:58.64ID:wOPDg8BC9■国際線エリアを拡大、国内線エリアは縮小
T1のリノベーションは、大規模な増築を伴わないとはいえ約700億円の大型投資となる。インバウンドの増加で手狭になっていた国際線エリアの拡張が主眼にある。具体的には、国際線エリアで出国手続き後に通る商業・飲食の集積ゾーンの床面積を、リノベ前の約1.6倍に広げる。一方で、国内線エリアの床面積は約25%減らす。
インバウンドを中心に国際線利用へと大きく偏重した利用実態に合わせようというのが今回のリノベだ。近年の訪日客急増で、18年度の国際線利用者は2060万人と国内線の約5倍に膨らんだ。だが1994年の開港当初は騒音問題を抱える大阪国際(伊丹)空港を廃港にし関空1カ所をハブ空港にする構想だったため、T1は国際線と国内線でそれぞれ1200万〜1300万人とほぼ同数の旅客が使う前提で設計された。
当初の想定と実際の旅客構成のギャップは年々大きくなり、手狭な国際線エリアの施設改善は喫緊の課題となっていた。大阪では今後万博に加え統合型リゾート(IR)の誘致も有望視される。そこでリノベによる収容能力の拡大を決めた。第2ターミナルも合わせて、国際線の受け入れ能力を現在の利用者数の倍の年間約4千万人まで引き上げる計画だ。
■商業・飲食を充実、非航空収入を増やす
国際線エリアの拡充に向けては、現在T1の2階中央部の大半を占める国内線エリアを南側に移す一方、その跡地を国際線出発エリアとする。これまではほぼ4階と3階に限られていた国際線エリアを2階にまで広げ、特に同エリア出国後の商業店舗や飲食店のゾーンを充実させる。
これまで免税店や飲食店が少なく弱かった非航空系収入を増やす狙いもある。改修では出国後に新たにウオークスルー型免税店を設け、スムーズに飲食店や物販店が集まるゾーンへとつなげる。同ゾーンは4つの異なる雰囲気をまとった空間へと分け、それぞれに飲食や物販のテナントをミックスさせる。デザインに日本らしさや関西らしさを取り入れつつ、利用客にとって魅力的な空間にするという。
2階の出発エリアを広くとりつつ、出入国審査といった手続き施設は3階に集約。4階の保安検査場は増床し、複数人が同時に検査できる「スマートレーン」を今より6台多い22台設けるなどして、効率性と利便性を追求する。
一方国内線エリアは床面積の縮小分を、スマートレーンの導入や出発エリアの商業店舗の拡充でカバーする。投資総額は改修費用のほか防災対策の約300億円を含め約1千億円の見込み。20年末にも工事に着手し、25年の万博開幕までに完了させる考えだ。
■アジアは施設拡張で先を行く
アジア各国・地域では膨らむ旅客需要を取り込むため、空港の新設や既存施設の拡大が相次いでいる。中国では19年9月に北京大興国際空港が開業し、将来的に1億人の利用を目指す。韓国の仁川国際空港も30年に世界有数のハブ空港になるとの目標を掲げ、24年までに滑走路を新設し旅客ターミナルを広げる。
国際航空運送協会(IATA)の予測では37年に世界の航空旅客数は現在より倍増し、なかでもアジアの伸びが大きいとされる。需要を取り込めれば周辺地域の振興にもつながるため力が入る。
乗り継ぎ利用が多いシンガポールのチャンギ空港も魅力向上に余念がない。19年10月に正式開業した「ジュエル」は、商業280店舗の他に人工滝や庭園迷路などを備えた複合施設。乗り継ぎ客にも観光消費を促す巧妙なしかけだ。
国内では羽田空港で、住友不動産がホテルや約90の商業店舗などを備えた複合施設を空港直結で建てる。今年の国際線発着枠拡大で訪日客がさらに増えると見込んでいる。
関空もこうしたアジアの動きを横目に見つつ、海上空港の制約のもと拡大競争とは一線を画す。施設の利用効率を高め空港の収入を増やし、持続的経営につなげるためのリノベだ。関空は乗り継ぎ客比率が1%以下と低く「インバウンドは大阪の街に出て消費しており、観光産業も発展していく」(関西エアポートの山谷佳之社長)と地域貢献度の高さを誇ってもみせる。
もっともリノベには限りがあり、拡大を続ける他空港と関空との規模の差は開く一方。将来像も改めて描く必要がありそうだ。
(大阪経済部 金岡弘記)
2020/1/2 2:00 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53893830X21C19A2XQH000/