https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200104/k10012235031000.html


イラン 司令官殺害で報復措置へ 事態悪化避けられない情勢
2020年1月4日 4時44分米イラン対立

イランの精鋭部隊、革命防衛隊の司令官がアメリカによる攻撃で殺害されたことを受けて、イランではアメリカを非難する声が強まっています。イランは今後報復措置に踏み切る構えで、事態の悪化は避けられない情勢です。

アメリカは3日までに、トランプ大統領の指示に基づきイラクの首都バグダッドで革命防衛隊のソレイマニ司令官を標的にした攻撃を実施し、殺害しました。

ソレイマニ氏は中東地域における外交や軍事作戦を担う実力者で、国民から「英雄」とも呼ばれるほど人気が高く、3日、ソレイマニ氏を追悼する集会がイラン各地で行われました。

このうちテヘラン中心部では数百人が集まり、大勢の人がソレイマニ氏の顔写真をかかげ、「アメリカに死を」と叫んでアメリカによる殺害を非難していました。
ソレイマニ氏の殺害を受けてイランの最高指導者ハメネイ師は「血で汚れた犯罪者には厳しい報復が待ち受けている」と述べ、報復措置に踏み切る構えを見せています。

また国の最重要政策を決めている最高安全保障委員会が召集され、この中で具体的な対応策について検討を行い「アメリカの攻撃は最大の戦略的誤りだ。この犯罪行為のすべての責任を負うことになるだろう」とする声明を発表しました。

イランが報復を警告する中、アメリカは攻撃が行われたイラクに暮らすアメリカ国民に対し、直ちに国外に退避するよう求めていて、アメリカとイランの間で衝突が起きる懸念が強まっています。

反米集会のイラン人たちは…

反米集会に参加していた26歳の服飾デザイナーの女性は「ソレイマニ氏の死亡が信じられません。間違いであってほしいとずっと思っていました。本当に悲しく、ことばもありません。イランはあらゆる可能性や方法で、報復しなければなりません」と涙ながらに話していました。

また40歳のエンジニアの男性は「ソレイマニ氏の殉職は私たちにとって大きな悲しみです。彼の死が抑圧された人たちを助け、アメリカとの戦いを後押しすることを望みます」と話していました。

米 各国への説明に躍起

今回の攻撃について、アメリカのポンペイオ国務長官は3日、イギリスのラーブ外相やフランスのルドリアン外相、それに中国で外交を統括する楊潔※チ政治局委員など、各国の高官と相次いで電話で会談しました。

このうちラーブ外相との会談でポンペイオ長官は「トランプ大統領が攻撃を決めたのは防衛的な措置であり、アメリカ国民の生命への差し迫った脅威に対応するためだった」としたうえで、事態をエスカレートさせないよう努めると強調しました。

ポンペイオ長官はこれに前後してCNNなどアメリカのテレビに相次いで出演し、必要な攻撃だったと強調しており、攻撃への理解を求めるねらいがあるものとみられます。

※「チ」は、竹かんむりに褫のつくり。

ソレイマニ司令官とは

殺害されたソレイマニ司令官はイランの最高指導者ハメネイ師直轄の「革命防衛隊」の精鋭部隊を率い、国民から「英雄」と呼ばれるほど人気の高い実力者として知られていました。

ソレイマニ司令官の精鋭部隊は「コッズ部隊」の名で呼ばれ、中東でイランの影響力を拡大させる工作活動を指揮するなど外国での特殊任務を担っていて、司令官自身、イラン国内で絶大な影響力を持つと評価されています。

ハメネイ師からの信頼が厚く、大統領選挙への出馬を取り沙汰されたこともあります。

ソレイマニ司令官の殺害を受けて、ハメネイ師に加えて政界の有力者も相次いで声明を出し、このうちラリジャニ議長はソレイマニ司令官を「国民的な英雄だ」としたうえで、「イラン国民は彼の死を黙って見過ごさない」と怒りをあらわにしました。

またイラン政府に近いことで知られるテヘラン大学のマランディ教授は国営テレビの電話インタビューで「ソレイマニ司令官はイラン国民から広く尊敬を集め、極めて人気がある人物だ。ソレイマニ氏への攻撃はアメリカの大きな計算違いだ。イラクにいるアメリカ人は直ちに国を離れたほうがよい」と述べて、イラクにいるアメリカの外交官や軍人らを標的にした報復攻撃が考えられるとして、強く警告しました。

イランの国営テレビは司令官の殺害を受けて、テレビ画面の左上に黒い帯を表示し、国をあげた追悼の意を表しました。