本田秀夫「子どものココロ」

 15歳のQくんは、もともと真面目で頑張り屋でした。それが、1か月ほど前から、何をやっても手につかず、落ち着きがなくソワソワするようになりました。外出すると、不安そうに周囲を見ながら歩きます。やがて、外出を拒むようになり、学校に行くのもいやがるようになりました。Qくんが言うには、みんなが自分を監視しているように思え、ときどき自分の悪口を言う声が聞こえてくるのだそうです。しばらくすると、特にきっかけもないのに興奮したり、不自然な場面で急に笑ったりするなど、感情面でも不安定になってきました。


本人が病気を強く否定する場合も

 10代後半以降に発症する精神疾患の代表的なものとして、統合失調症が挙げられます。これは、神経発達症(発達障害)のように乳幼児期から一貫した行動特性がみられるのではなく、人生の途中から発症してくるのが特徴です。脳機能に何らかの異常があるという仮説が立てられているものの、まだ原因がはっきりしない疾患です。早ければ思春期に発症することがあります。

 統合失調症は、幻覚妄想、思考障害、感情障害、意欲の障害が出現する病気です。症状は、大きく陽性症状、陰性症状、解体症状に分けられます。

 陽性症状は、普通なら存在しないもの(幻覚や妄想)が現れる症状です。幻覚のほとんどは幻聴で、とくに自分を誹謗(ひぼう)する声が聞こえることが多いとされます。妄想は被害関係妄想が多く、実際にはそんなことがないのに、「自分に関するうわさが広まっている」「常に誰かが自分を監視している」などと信じ込んでしまいます。幻覚や妄想は、いったん治まっても、しばらくして再発することがしばしばあります。また、幻覚や妄想が強いと、本人が周囲の人たちを信じられず、自分が病気であることを強く否定する場合があります。

 陰性症状は、もともと存在していたものが消失・低下する症状です。感情の自然な動きがなくなる、意欲が低下する、思考力が低下し会話の内容が乏しくなるなどの特徴が徐々に目立ってきます。

 解体症状は、思考や行動のまとまりが失われる症状です。目的のある一貫した行動をとることが難しくなり、会話が支離滅裂になります。


学力、意欲が低下 登校をいやがる

 統合失調症の発症初期には、明らかな幻聴や妄想が確認できるよりも前に、「不安・緊張の高まり」や「オドオドした態度」、「会話のまとまりのなさ」などが目立つことがあります。睡眠の異常(寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるなど)もしばしば生じます。思春期の場合、学力の低下、学習意欲の低下、登校しぶり、友だち付き合いの減少など、学業や学校生活、対人関係に関連した行動の変化で気づかれることもあります。

 原因は不明ですが、神経伝達物質の働きを調節する作用のある薬を適切に用いることで、多くの場合、症状が改善することが知られています。近年では、薬物療法の進歩によって、症状の進行を抑え、再発を防げるケースが増えています。外来通院だけで薬の調整がうまくいくことが多いのですが、症状が急激に進んで情緒不安定になって落ち着かない場合などには、入院治療をすることもあります。入院は漫然と長引かせず、情緒が落ち着いたら、できるだけ早く外来治療に戻すようにします。
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ストレスを避けるよう生活指導

 薬物治療で症状を落ち着かせるのと並行して、社会参加する力を回復させるためのリハビリテーションを行います。すぐに学校に復帰することが難しい場合には、病院のデイケアや作業療法などを利用しながら、徐々に社会参加の練習をしていきます。

 診察の中で、病気に関する知識や症状との付き合い方などを、本人に学んでもらうことも重要です。生活のリズムを整え、症状の悪化のきっかけになるようなストレスを避けるよう生活指導をするとともに、家族にも本人への接し方のコツを学んでもらいます。

 統合失調症では基本的に薬物治療が中心です。薬物治療は早い時期から始めた方が、症状の進行を抑えられる可能性が高くなります。心配な場合は、なるべく早く、精神科のある医療機関を受診することをお勧めします。

1/7(火) 12:13配信
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