中国中部の湖北省武漢市で、原因不明のウイルス性肺炎を発症した患者が相次いでみつかっているなか、地元当局は61歳の男性が死亡したと発表した。
この肺炎が拡大した昨年12月以降、死者が出たことを認めるのは初めてだ。

中国政府は国内では武漢以外で発症者がいないと発表しているが、すでに香港やマカオ、シンガポールでは出張や旅行で武漢を訪れた人の発症例が発表されているほか、韓国では中国人の女性観光客が発症し、ソウル市内の病院に隔離されている。
海外で中国人の発症者が出るのは初。

日本にも2018年には年間838万人もの中国人観光客が訪れており、中国内で感染者が増えれば、日本でも「武漢型新型肺炎」流行の可能性は否定できない。
特に、中国では今月下旬から春節(旧正月=25日)の大型連休が始まり、国内だけでも例年、延べ約30億人が移動し、海外には約700万人が渡航するだけに、新型ウイルス性肺炎が蔓延すれば世界的にも大きな被害が出ることが予想される。 

武漢でこの肺炎の患者が最初に確認されたのは昨年12月4日だったが、武漢市政府が事実を発表したのは12月31日と発生から3週間以上が経過していた。
それも、30日に同市の病院が「原因不明のウイルス性肺炎が発生した」との発表を受けたもので、市当局は「隠しきれない」として発表した可能性が濃厚だ。

すでに、今月5日の発表では59人が発症し7人が重症だったが、そのうちの62歳の男性が死亡した。
このほか、感染の疑いがある者は163人に上る。香港でも武漢からの出張者を含む30人が感染し、うち13人が退院、17人が入院中だ。

マカオでは8人、シンガポールでも3歳の女児が感染したことが確認されている。
韓国でも中国人観光客1人が発症した。

症状としては、体温が38度から40度以上に達するほか、激しい咳が出るなど、風邪の症状に似ているという。
世界保健機関(WHO)は、患者の症状などから、原因は新型コロナウイルスの可能性が否定できないと指摘する。
日本の厚生省は5日、中国への渡航者に注意を呼び掛ける文書を発表したほか、駐中国米国大使館も「第1級監視警報」を出すなど警戒を呼び掛けている。

■ 信用性が低い中国当局の発表

武漢市当局は「今月5日以降の発症者はいない」とコメントしている。
このため、このまま推移すれば「武漢型新型肺炎」は自然消滅との希望的な観測も出始めているものの、そうたやすく収束しそうもない。

「武漢以外に発症者はいない」との中国当局の発表は、にわかには信じがたい。
なぜならば、すでに香港、マカオ、シンガポール、さらに韓国でも発症者が出ているからだ。

武漢と香港・マカオは中国式新幹線である「高速鉄道」で直接結ばれており、感染者が出やすい。
鉄道やバスで武漢と直接結ばれている北京や上海、広州、東北地方の都市も同じだ。

香港やマカオで発症者が発見されているにもかかわらず、中国の各都市で発症者が発見されないのは極めて不自然だ。
すでに、中国版短文投稿SNS「微博(ウェイボー)」上では「武漢に行っていた知人が新型ウイルスにかかって入院したらしい」などという情報が投稿されたが、「当局によって、すぐに削除された」との情報も飛び交っている。

中国当局は中国全土の病院に対して、武漢型新型肺炎と同じ症状の患者を発見した場合、「速やかに届け出て絶対に公表しない」よう通達を出しているとの情報もある。
中国共産党政権の隠蔽体質はすでに知られており、浙江省で高速鉄道が脱線した際、新幹線ごと地下に埋めようとした事例がその端的なケースだ。

■ SARS問題では箝口令

実際に、中国当局が疫病蔓延を隠蔽したケースは18年前にも起きている。
2002年秋、中国南部の広東省で重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した際、中国当局は発生当初から箝口令を敷いたことで、翌03年7月の終結宣言までに、中国本土で5300人以上が感染し349人が死亡。
同じく香港でも1750人が感染し299人が死亡するなど、世界中で700人以上が犠牲になっている。

当時、筆者は03年春に中国東北地方の大連や瀋陽、ハルビン、天津などを回り北京から帰国した。
その際、風邪をひいたのか、帰国後に40度以上の発熱に見舞われ、1週間以上入院した経験がある。

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