「ひきこもり」の我が子を何とかしたい。そんな不安や焦りが新たな問題を招いている。
ジャーナリストの池上正樹氏は「藁にもすがりたい親や家族を狙う『引き出し屋』が跋扈(ばっこ)している。
テレビなどで取り上げられているが、数百万円の費用を請求するなど実態は悪質なものが多い」という――。

■「暴力的支援」業者に子どもを託す親

公的な支援を頼ることができないとわかり、早くどうにかしなければと焦った「ひきこもり」当事者家族が、いわゆる「暴力的支援」とされる業者に依頼をしてしまうケースが続出している。
「暴力的支援」とは、「ひきこもり支援」をうたう業者が、本人の意思を無視して、本人が望んでいない「支援」を押しつける行為全般のことだ。

対象者を無理やり自宅から連れ出すことから、「引き出し屋」とも言われるが、相手に暴力を振るっていなくても、ウソをついたり、騙したり、断れないように追い込んだりして、宿泊型の施設などに連れていく手法そのものが「暴力的」と言える。
こうした悪質な業者の特徴は、「ひきこもり」や精神疾患があってもなくても関係なく、家族からの依頼があれば、対象者を支配関係に置き、心に恐怖を植えつけて、思い通りにコントロールしようとする。

自由や自己決定権を奪い、事実上の監禁状態に置かれることも少なくない。
実際、そうやって連れて行かれた業者の施設などから脱走者が多発していて、人権侵害が行われているとの指摘もある。

業者の元から脱走や脱出した後も、夜中に悪夢でうなされて目が覚めるなど、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に苦しむ人が多い。
そのため、自分を売った親を一生恨み続け、家族関係は崩壊。ひきこもり状態をより強化させてしまった例もある。

■半年で800万円を請求された事例も

家族がこうした業者と安易に契約を結んでしまうと、3カ月で500万円、半年700万円〜800万円という高額を請求されることもある。
「自立支援」を謳いながら、支援プログラムやケアはまともに行われず、逆に本人が自立しようとする活動を妨害するなど、家族が事前に業者から受けた説明と大きく異なっているのが実態だ。

そのため、家族が契約を結んだ後、消費者トラブルになる事例も少なくない。
筆者が把握しているだけでも、これらの業者などに対して、被害者や家族から5件の訴訟(うち1件は刑事告訴)が起こされている。
さらに今後、複数の事例で法的措置をとる動きがあるなど、「暴力的支援」は社会問題化している。

公的な相談支援が頼りにならず、藁にもすがりたい親や家族にとっては、ほかに情報や支援メニューがないことから、こうした業者に頼らざるを得なくなるほど心が弱り、追い詰められているのも事実だ。
しかし、本人のひきこもり状態の解消どころか、心を傷つける真逆の結果になりかねない。
親は、違法行為に加担する加害者にもなるし、被害者にもなることを知っておく必要がある。

■悪質な業者に加担するマスメディア

メディアの中には、「勧善懲悪ストーリー」の仕立てに乗せられて、“支援”と称する悪質業者を宣伝したり、「支援の専門家」として取り上げたりしているものもある。
しかし、こうした悪質業者をメディアが取り上げるという行為は、支援業者の「紹介したい事例」の宣伝に加担することにもなる。

そのストーリーの裏には、メディアに売られる当事者たちがいて、新たな被害が起きかねない。
「ひきこもり」報道に関して大事なことを言えば、これまでの「レガシーメディア」がよくやるように、てっとり早く記事や番組を取りまとめたいと思って表向き活動している人に貼りつけば、PRと引き換えの記事が効率よく書けるだろう。

しかし、最先端の情報は出てこない。
これは長年、取材をし続けている者としての実感である。
参考までに、把握している限り、一連の事件以降、ひきこもり当事者グループの中には、メディアに同じ当事者を売るような事例は1つもなかった。

■川崎19人殺傷事件で活発化した「ひきこもりビジネス」

言語化すらできていない人たちの話をじっくり聞いていると、炙り出されるように社会が見えてくることがある。
その中から、課題を構築していかないと本質的な取材はできないし、社会を動かすこともないだろう。

☆ 続きはソースをご覧ください
https://news.livedoor.com/article/detail/17660707/
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