人生のエンディングに自分らしく備えようという「終活」。その新たな準備項目に、いまや生活にすっかり浸透したSNSなどの「デジタル個人データ」をどう処分するか、という難題が加わってきた。これまでの「遺産相続」や「所持品の整理」などとは、ノウハウがまるで異なる。「消し去りたい自分の過去が、電子データとして永遠に残ってしまうのでは?」といった不安に、対策の分かりにくさも加わって関心が高まり、専門業者のサポート事業も生まれている。

信託銀行が「デジタル遺品整理」

 三井住友信託銀行はこのほど、単身者や身寄りのない「おひとりさま」の死後事務をまとめて支援するサービスを発表した。目玉の一つが「デジタル遺品整理」だ。パソコンやスマホから確実にデータ消去したい、フェイスブックなどの書き込みを修正や移行してほしい……。そんな要望にひとまとめで対応する。


 記者会見した同社の人生100年応援部長、谷口佳充さんによると、このサービスは社員の発案による新事業だ。「ひとり身のお客様から、もろもろの不安をうかがうなかで、信託銀行ならではの支援ができると考えた」と経緯を明かす。従来は「相続」「遺品整理」「希望の葬儀形式」といった項目ごとに、それぞれの専門業者と契約するのが一般的だったが、三井住友信託ではこれらに一括で対応するそうだ。

 なかでも「デジタル遺品整理」は自慢のサービスだ。「個人経営の行政書士さんなどが取り組むケースはあったが、信託銀行としては国内初」と谷口さん。サービスの準備には時間と手間がかかった。なにしろパソコンやスマホなどは機器ごとに違いがあり、またフェイスブックやツイッターといったSNS事業者ごとでも利用者が亡くなったときの対応や手続きがバラバラだから、大変だったのだ。

フェイスブックには「追悼アカウント」

 そもそも利用者が亡くなると、SNSのアカウントなどはどうなるのか。特徴的なのが、最大手のフェイスブックの対応だ。あらかじめ希望しておけば「追悼アカウント」に移行できる。その方法について、サイトに丁寧なヘルプページがあり、追悼アカウントのねらいをこう説明している。

利用者が亡くなった後に友達や家族が集い、その人の思い出をシェアするための場所です。追悼アカウントにすると、他の利用者のログインを防いで、アカウントの安全を確保できます。

 第三者を指名して追悼アカウントの管理人を任せてもよいし、アカウントを完全に削除してもよい。フェイスブックではどちらかを選べるし、もし管理人を指名してなくても、アカウントを消さない選択にしておけば死後は自動的に追悼アカウントに移行される。

他社はどうか。グーグルは「アカウント無効化管理ツール」を用意している。故人が管理方法について明確な指示を残していなかったときは、遺族や代理人からの連絡に基づいてアカウントを閉鎖できるほか、残っている大切なデータを受け取れるという。やはりサイトには専用ページがある。

 このほか、ツイッターやインスタグラム、LINEといったサービス会社ごとに、利用者が死亡した場合の方針があり、追悼アカウントやアカウント削除のしくみがそれぞれ準備されている。ただし、必ずしも説明は分かりやすくないし、必要な手続きも明確とは言いがたい。こうした不透明さや理解のしづらさが利用者の不安をかきたて、サービス会社の登場にもつながっているのだろう。

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全文はソース元で
2020年01月16日
https://webronza.asahi.com/science/articles/2019120600001.html