若者がターゲット?
新たな「SNS詐欺」

ネット事情に明るいはずの若者が引っかかるSNS詐欺。誘い文句には、巧妙なマインドコントロール手法が使われている(写真はイメージです) Phto:PIXTA

「現金プレゼント詐欺」がツイッター上で横行している。SNS上で最近目にする「現金100万円をプレゼント。応募方法はフォロー&リツイートしてくれた人!」といったプレゼント企画である。


 そもそもはZOZO創業者の前澤友作氏や青汁王子こと三崎優太氏など、著名人によって注目されるようになった現金バラマキ企画だったが、これを模倣したアカウントが「お金を受け取るためには登録費・住所が必要」などと巧みに個人情報を聞き出したり、現金を振り込ませたりする詐欺被害が後を絶たないのだ。なかには堂々と有名人になりすました偽アカウントの投稿も確認されている。

「SNS上での、主に若者を対象にした詐欺や悪質商法が最近は増加しています」

 そう話すのは『なぜ、人は操られ支配されるのか』の著者で、立正大学心理学部教授の西田公昭氏だ。

「2〜3年前に私が消費者庁と協力して1万人のデータを取った際、悪質商法の被害者は年々増えていることが判明しました。高齢者をカモにした詐欺が定番化する一方で、最近は若者を狙った悪質商法が横行しています。悪質商法の悪どいところは、本人の責任もグレーゾーンで詐欺と呼ばれない点にあります」

 西田教授によると、マルチまがいの悪質商法は、ターゲットが低年齢化しているのが特徴だという。

「基本的に若者は高齢者より資金力がないので、利用されるとすれば、お金よりも労働力ですね。SNSでの拡散や、周囲へ営業する役割を担わされるなどで利用された上で、少しずつお金を吸い取られます。若者の被害金額は大体50万〜60万円で、悪質商法としては少額ですが、学生ローンを組まされるなど被害額が大きくなる場合もあります」

 特に危険なのは、就活中の大学生だという。たとえば就職先が決まらず焦る学生や、進路がはっきりせずに悩む学生に対し、「やりがい」や「好き」を仕事にできるという点を強調し、インフルエンサーにならないかと勧誘する商法がそれに当たる。

「SNSで影響力を持つ『インフルエンサー』にあなたもなれるよ、苦労しないでもこんなに簡単に稼げるよ、という商法は増えているようです」


 今や、若者にとってインフルエンサーは憧れの職業。一般人でありながら、芸能人のような投稿をして自由にお金を稼ぐ。そんな若者の承認欲求を利用したインフルエンサー詐欺は、実際に起こっている。今年8月、日テレ系の「news zero」内で紹介された一例では、「商品を買って、ハッシュタグをつけてネット上にアップするだけで報酬がもらえる」といううたい文句にだまされ、高額商品を購入したものの、その後相手と一切連絡が取れなくなったという被害が若者から報告されていた。

 警察庁の発表では、2018年のサイバー犯罪の検挙件数は9040件と、過去最多を記録した。もちろんここには児童ポルノや著作権法違反などさまざまな犯罪が含まれるが、「詐欺」も972件と少なくない。しかしネット事情に詳しい若者ですら、簡単にだまされてしまうのは一体なぜなのだろうか。

「自分の常識こそおかしいと思わせる。それがマインドコントロール的手法です。人間は実例に弱い。SNSで実際に成功している人々のきらびやかな写真や、連日の高価な外食写真、高級外車に乗っている姿、大量の札束動画…冷静になってみれば明らかにうさんくさいものでも、そういった実例を見せられると判断力が低下してしまう。『夢をかなえたいならチャレンジする必要がある。もし私の話していることが本当だったらどうしますか?』と問われ、現状に満足していない人は、チャンスを逃したくない!と、つい釣られてしまうのです」


全文はソース元で
2020.1.19 5:25
https://diamond.jp/articles/-/226169