出入国在留管理庁による外国人の長期収容問題で改善を訴える集会が23日、参議院議員会館で開かれた。仮放免中の外国人3人や弁護士らが出席して収容体験や問題点を語り、環境の改善や被収容者の早期解放を訴えた。【和田浩明/統合デジタル取材センター】

■アブドラヒさん

 約4年収容されたイラン人のベヘザード・アブドラヒさん(41)は「生活基盤が日本にある外国人や、帰国すると迫害される懸念がある外国人にも、入管当局は一方的に退去命令を出す。収容者の体や精神の健康、家族が破壊されるのを見た。残念だ」と日本語で発言。過去の外国人収容者が自殺した事例などに触れ、収容施設を「反日収容者が育つ場所にしている」と入管当局の対応を批判した。その上で、「収容者は希望と夢を持ち世界の多くの国から日本を選び来日した。長期収容をやめるまで応援してほしい」と話した。

 アブドラヒさんによると、2006年に来日しさまざまな仕事をしたが16年にオーバーステイ(不法滞在)で収容されたという。仮放免は28日までで、再収容される懸念がある。イランはイスラム教シーア派が多数派だが、別の宗教に改宗したアブドラヒさんは帰国すれば迫害されることを懸念している。

■「性的指向の違い認められず」ペルーのナオミさん

 ペルー人でトランスジェンダー(心の性と体の性が一致しない人)女性のナオミさん(47)は、カトリックが主流の母国で「いじめや嫌がらせを受けた。殺された友人もいる。日系人の友人から日本はよい国と聞いたのでやってきた」と説明した。13年12月にオーバーステイで収容され、名古屋の入管施設や東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で約4年1カ月収容された。

 ナオミさんは通訳を通じ「トランスジェンダー女性と認められず、男性と同じ部屋に収容された。他の収容者や担当者からひどい扱いを受けた」などと語った。

「人間として扱われない」スリランカのバンダーラさん

 スリランカ人のダヌカ・バンダーラさん(37)は強制退去処分を受け、過去に入国した際に使用した他人名義の旅券の名前が退去手続きの書類に使用された。バンダーラさんによると、大使館も「本名はバンダーラ」としたが、入管は名前の修正を拒んでいる。旅券と関連書類の名前が違うため、出国の手続きが進まないという。

 2年5カ月の「意味のない収容」(バンダーラさん)の後、うつ病治療のため19年12月に仮放免されたという。収容中は「(他人名義の旅券の)名前を認めないと怒鳴られたり、具合が悪くなっても治療を受けるまで時間がかかったり、職員は我々を人間として扱っていない。体重が70キロから47キロに減った」と話した。

■「制圧で暴力」と国を提訴 クルド人のデニズさん

長期収容されている外国人の中には、「職員に暴行を受けた」として国に損害賠償を求める訴訟を起こしたトルコ国籍のクルド人、デニズさんもいる。日本人女性と結婚したが東日本入国管理センターに収容中。トルコの家族への悪影響を懸念し姓は公表していない。

 代理人の大橋毅弁護士は23日の集会で、訴訟で国側が昨年12月に東京地裁に提出した取り押さえる様子の録画映像を再生した。5、6人の職員が「制圧」と声を上げ、デニズさんの手を後ろに回し手錠をかける様子や「痛い、痛い」などと訴えるデニズさんの様子が映っている。

 大橋弁護士は「デニズさんはこの暴力でPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった。その原因を作った人たちに囲まれ収容されている。外に出さないことで苦しめ自ら出国させようとしている」と入管当局の対応を批判した。

 集会の開催を呼びかけた石川大我参院議員は「収容の長期化や環境など状況はひどい。改善に取り組みたい」と話した。国会議員22人が今回の改善の呼びかけを支持しているという。

■半年以上の収容は679人、最長は7年4カ月

 出入国在留管理庁によると、全国の入管施設には19年6月現在で1253人が収容されている。このうち半年以上の長期の収容者は679人で54%に達している。14年の290人の2倍以上だ。最も長期間の収容者は7年4カ月のイラン人だという。

 先の見えない収容の長期化を受け、自殺する人や死亡する人も出ている。

以下ソース先で

毎日新聞2020年1月24日 14時41分(最終更新 1月24日 14時41分)
https://mainichi.jp/articles/20200124/k00/00m/040/166000c
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2020/01/24/20200124k0000m040167000p/0c8.jpg