■重症急性呼吸器症候群SARS

 2002年11月から2003年7月にかけて、中華人民共和国南部を中心に起きたアウトブレイクでは、世界保健機構 (WHO) の報告によると、
香港を中心に8,096人が感染し、37ヶ国で774人が死亡したとされている(致命率9.6%)
(なお数字に関しては、世界30ヶ国8,422人が感染、916人が死亡(致命率11%)という文献も存在する)。
  
現在の症例定義は、「38度以上の高熱及び咳、呼吸困難、息切れのいずれかの症状」「レントゲン検査において肺炎の症状」を呈し、この原因が不明で、ウイルス検査で陽性となった者とされている。
また、水様性下痢を呈する例も存在する。感染経路としては飛沫感染や接触感染が考えられている。

■予防
SARSのワクチンは研究段階である。治療法は確立していないが、2002年の中華人民共和国でのアウトブレイク時の教訓から、一般的な感染防止策の徹底が二次感染防止に有用であることが示されている。

また感染経路としては、飛沫感染と直接・間接的な接触感染が想定されている
SARSコロナウイルスは環境中で安定であり、中国政府対策本部からの発表によれば、紙・木などの環境中で3日間、
痰や糞便中で約5日間、血液中で15日間生存するという(従来知られていたコロナウイルスでは、環境中で3時間)。
また消毒用アルコールや漂白剤、界面活性剤での消毒で死滅する。隔離と検疫がSARS予防に重要である。

■他にも次のような予防法が存在する
手洗い
接触感染を媒介しうる物の表面の消毒
サージカルマスクの着用
体液の接触を避ける
SARS感染者の私物を、熱した石鹸水で洗浄する(フォーク・スプーン類や皿などの食器類、寝具など)

■治療法
治療法は確立しておらず、対症療法として解熱薬、必要に応じた酸素吸入・人工呼吸などが用いられる。
SARS患者は隔離病棟に入院させる必要があるが、この際部屋を陰圧にし、看護する側も完璧な防護をした上で、患者との不必要な接触を避けることが肝要である。