1000万人の“犠牲”は覚悟の上か

 肺炎の感染拡大は、中国にとってはまさしく戦争と同レベルの非常事態である。当然、犠牲は避けられない。人民の生命はどれだけ失われるだろうか。

 新型コロナウイルスではこれまでに患者の約20%が重症化し、2.3%が死亡している。一方、パンデミックで最大級だったスペイン風邪(1918〜19年)の場合、感染者5億人、死者5000万〜1億人に上った。当時の世界人口は18億〜20億人であると推定され、全人類の3割近くがスペイン風邪に感染したことになる。

 このことを勘案し、中国人14億人の3割が新型ウイルスに感染し、2.3%が死亡すると仮定すれば、ラフに見積もっても死者は1000万人近くに上る。習近平は最悪のシナリオとして、そこまでの覚悟を持っているのではないかと筆者は見る。
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「今年の冬のみ」で抑えられるかがポイント

 新型コロナウイルスによる死亡者の多くは、高齢者が占めている。非情なことではあるが、習近平はこれを、中国の少子高齢化解決の“一助”として利用する可能性も否めない。

 いずれにせよ、新型ウイルスからの人命救助の施策は政権の維持や利益に合致するように、濃淡をつけるはずだ。ただし、後に国内外から人道問題として非難を招かないように、巧妙に行う必要がある。
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 新型ウイルス事態に対する基本認識は、「これは一過性のものである」ということだ。この事態が、スペイン風邪のように「二冬」も続くことなく、「今年の冬のみ」で制圧・克服できるかがポイントだろう。

 従って、この事態に対処する基本方針は「如何なる荒療治も辞さず、人・物の損害・犠牲を最小限に抑えて『今年の冬のみ』で乗り切ること」である。

 中国にとって、新型ウイルス対処で最も重視すべきことは、習近平・共産党独裁体制の堅持である。これは、手段を選ばずに実施しなければならない。この事態で、人民はパニック状態となり、習近平政権に対する怨嗟の声が高まるだろう。ただ、幸いなことに、人民は新型ウイルスに対する恐怖や心身の弱体化により、強力で組織的なデモや暴動は起こしにくい状況にある。

 しかし、新型ウイルスの拡大が低調になれば、デモや暴動が活性化する可能性もある。これに対しては以下のような対策・手段を講じるだろう。

李克強総理に全責任を負わせる布石を打っている

(1)トカゲのしっぽ切り戦術
 北朝鮮・金王朝三代など独裁者が特にやってきた、責任を他に転嫁する手法である。湖北省のマスクの年間生産数を間違え、「108億枚から18億枚、最後は108万枚」に3度も言い直した王暁東省長など、同省と武漢市の幹部の初動対応を槍玉に挙げて処断することが考えられる。

(2)派閥闘争(太子党対共青団)
 自派閥(太子党)のライバルである、共青団トップの李克強総理を中央新型コロナウイルス肺炎対策工作指導グループ長に任命しているので、最終的には彼に全責任を負わせることができる布石を既に打っている。

(3)武漢市の事実上の封鎖の意図
 コロナウイルス肺炎感染が深刻化している武漢市に事実上の封鎖措置を実行させた(表向きは武漢市決定)。この措置には、デモや暴動が全国に広がる兆しが出たら、それに先駆けて地域ごとに分断・孤立化させる意図も含まれている。

(4)軍・武警の即応体制
 軍・武装警察部隊には、高度の即応体制をとらせ、米国などの介入はもとよりデモや暴動への対処を準備させる。これにより、軍のクーデターも抑止できるはずだ。

2/4(火) 17:00配信  全文はソース元で
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200204-00031532-bunshun-int