【記者:Naaman Zhou】
 新型コロナウイルスへの懸念が広がる中、オーストラリアの医師らがこのほど、アジア系オーストラリア人を標的にした人種差別の事案が増加していると警告した。ガーディアン・オーストラリアは、シドニーの電車内で人種差別的な嫌がらせを受けたある若い母親のケースを取材した。

 救急科で勤務するオーストラリアの医師らを代表する団体は、新型コロナウイルスについて、事実に基づき冷静に対応するよう、そして誤情報が広がる中で「パニックや分断」がないよう求めた。

 中国の武漢から感染が広まった新型コロナウイルスをめぐっては、感染症例の増加に伴い、英国、フランス、カナダ、その他の国でも人種差別の事案が報告されている。

 シドニー在住のアンジェラ・プレンダーガストさんは、ある女性が、「ウイルスをまき散らしている」ため電車の端に立てと怒鳴られているのを目撃し、介入した出来事があったとガーディアン・オーストラリアに話した。

 プレンダーガストさんは1日午後、シドニー郊外で電車に乗っていたところ、中年の白人女性が乗車してきて、子どもと一緒に移動中だったアジア系オーストラリア人の若い女性に嫌がらせを始めた。

「『せきはあっちでしろ。せきをやめろ。ウイルスはそうやって広がるんだ』と女性が怒鳴っているのが聞こえた。(怒鳴られていたのは)若い女性で、ベビーカーで赤ちゃんを連れていた。空席があったにもかかわらず立っていた」

「そして、そのアジア系の女性は、白人女性に怒鳴り返していた。『すみません。でも私はせきをしていないし、何もしていない』」

 プレンダーガストさんがアジア系の女性に大丈夫かと声をかけたところ、白人女性は構うのをやめたという。

「このアジア系の女性は、中国に行ったことすらないと言っていた。本当にばかげている」

 オーストラリア救急医療大学(ACEM)は3日、コロナウイルスにまつわる人種差別的な反応について警告し、事実に基づいたアプローチをするよう求めた。

 ACEMの前学長サイモン・ジャドキンス博士は、救急科内で中国系の外見をした患者や職員が人種差別的な嫌がらせの対象となる事案が増加しているとの報告を受けていると話した。

「分断や外国人嫌いを促すためにこのような出来事を利用するのではなく、今こそ、多文化で、包括的な、多様性のあるコミュニティーとして、お互いを支え合い、コロナウイルスの大流行から影響を受けている人たちを支えるために協力する必要がある」

 ニューサウスウェールズ、クイーンズランド両州保健省は先ごろ、中国人コミュニティーを狙った人種差別的なデマを訂正する声明の発表を余儀なくされた。

 クイーンズランド州では、同州保健省から住民に向けた警告を装った画像が拡散された。そこには、「中国系以外の住民3人に対し中国系住民1人の人口割合となる全地域」を避けるよう示されていた。
 
 ニューサウスウェールズ州では、さまざまなアジア料理(存在しないものも含まれていた)がコロナウイルスを媒介すると主張する投稿が拡散された。

 投稿は、中国系オーストラリア人の人口が多い郊外の地域で「空気中」からコロナウイルスが検出されたとうその主張をしていた。

 ゴールドコースト在住の外科医レア・リャン氏もまた、患者の1人から、コロナウイルスがあるから自分とは握手しないと冗談で言われたとソーシャルメディアに投稿した。「私はオーストラリアから出たことがない。これは良識ある公衆衛生上の予防策などではない。人種差別だ」

 ACEMの学長ジョン・ボニング博士は3日、「新型コロナウイルスの現状は、懸念の種だ。無関心でいるべきでないが、パニックや分断を起こすべきでもない」と話した。

 プレンダーガストさんは、自分で実際に目にする以前から、人種差別の事案やデマを複数聞いていたと話す。

「バスで怒鳴られた話をしてくれた友達もいる」とプレンダーガストさんは言う。「自分自身が経験したり、誰か(が差別されるの)を見たりするのはある意味、時間の問題だった。私もアジア系だからだと思うが、そればかり考えていた。私の身に起きるのはいつだろう?って」 【翻訳編集】AFPBB News

2/10(月) 11:21配信
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